個人消費低迷は不可避

新型肺炎の影響で、観光客に人気のスポット「鳥の巣」も閑散としている
新型肺炎の影響で、観光客に人気のスポット「鳥の巣」も閑散としている

 今回の新型肺炎の感染拡大により、消費喚起につながる様々なイベントも中止となっており、個人消費の低下は避けられない。

 例えば、春節の時期に開催され多くの人でにぎわう「廟会(縁日)」が中止となった。映画館も休館となり、封切りを控えていた「賀歳片(お正月映画)」の公開が延期された。上海ディズニーランドや北京の故宮博物院などの施設も休業を余儀なくされた。

 国内外全ての団体旅行も禁止となった。私の住む北京では、いつもこの時期には地方からの観光客でごった返すのだが、観光客に人気の「王府井」や「北京国家体育場(鳥の巣)」も人がまばらだ。

 北京の観光スポットの一つ「前門」でバーを経営する私の友人も、「観光客を目当てに春節時期も店を開けたが、今は客がほとんど来ない」と肩を落とす。私個人としても、予定していた食事会やパーティーを全てキャンセルした。飲食業に与える影響も甚大だ。

 観光スポットが閑散としている一方、規模の大きな公園には北京市民が多く集まる。10kmのランニングコースを備えたオリンピック森林公園には、マスクを着用したまま走るランナーも多く見られた。市内の室内施設の休業が相次ぎ、どこにも行けず時間を持て余した家族やカップルが、感染リスクが比較的低いと思われる開放的で緑豊かな市民公園に集まっているのかもしれない。

 余談だが、日本政府だけでなく、北京と姉妹都市の東京都や、武漢と友好都市の大分市など地方自治体が防護服やマスクなどの支援物資を送り、企業や個人レベルでも寄付が続々と寄せられた。日本国内から相次ぐ支援に、ネット上では中国国民の感謝の声があふれ、私個人に対しても同僚や友人たちから「日本の支援に感謝します」というメッセージを多く頂いた。

「所得倍増計画」にも影響

 マクロ経済に対する長期的な影響を判断するのは時期尚早だが、短期的な影響は避けられないだろう。しかし、中国共産党結党100周年を来年に控えた中国にとって、この「短期的」な経済成長が極めて重要となる。

 中国政府は「小康社会(ややゆとりのある社会)」を20年までに全面的に実現する目標を掲げている。その具体的内容の一つが、「20年のGDPを10年比で倍増させる」という「所得倍増計画」だ。国家の威信をかけた必達の目標といえよう。

 従来であれば20年に6.2%以上の経済成長が必要とみられていたが、19年11月に公表された経済センサス調査を基に過去の値が改定され、5.6%以上の経済成長でこの目標が達成できる見通しとなった。19年の実質経済成長率が6.1%だった実績に鑑みると、この目標は比較的容易に達成できそうだが、今回の新型肺炎の影響により予断を許さない状況になっている。

 この危機的困難を乗り越え、「全面的小康社会」を実現できるか。今年は中国経済にとって試練の年となりそうだ。

この記事はシリーズ「西村友作の「隣人の素顔」~リアル・チャイナ」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。