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天津保税区国際汽車城の駐車場は、北京市や上海市、山東省など他地域ナンバーの車であふれる。

港町で広がる自動車並行輸入

 もう一つ、中国汽車工業協会の統計に反映されないのが輸入車である。中でも、私が注目しているのが、15年に解禁され近年急速な発展を遂げている並行輸入車市場だ。 並行輸入車とは、正規代理店ルートとは別のルートで輸入販売する正規品の自動車を指す。

 中国で最も大きな自動車並行輸入マーケットがあるのが天津自由貿易試験区である。その一角に、「並行輸入」「貿易」の文字が至る所に掲げられ、街全体が「並行輸入 車市場」の様相を呈しているエリアがある。

 私が実際に足を運んだ「天津保税区国際汽車城」「太平洋国際汽車城」には、広大な敷地に、アメリカ、カナダ、メキシコ、ヨーロッパ、中東の5地域から輸入した高級 車が所狭しと展示されていた。販売員によると、スペースの関係で展示できない車も倉庫に数多く保管されているそうだ。

 私が訪れたのは平日だったが、地元天津以外からも、隣の北京市や河北省、遠くは上海からも客が来ていた。「内モンゴルや東北など遠方からの客も多い」という。

 正規ディーラーの保証を受けられないなどのデメリットもあるが、並行輸入車の魅力は、値段の安さと種類の豊富さである。中国国内では生産していない車種もあり、他 人とは違うものを求める客の虚栄心をくすぐる。

 今年天津で並行輸入車を買ったという北京の友人に話を聞くと、「価格は61万元(約915万円)で、正規ディーラーよりも5万元(約75万円)ほど安かった。ただし、国内 ではすでに生産停止になっていて並行輸入以外では入手できない」とのことだった。その友人が選んだ車が、トヨタのランドクルーザーだ。

 全ての並行輸入車の中で、最も人気のメーカーがトヨタで、中でもランドクルーザーが最も売れている。残価率が高く、メンテナンス費用が低いのが人気の理由だという 。また、トヨタ車は全て中東から輸入されており、ある販売員は「中東版は頑丈」と説明していた。実際に、展示台数が最も多かったのがトヨタのランドクルーザーだった。

 この自動車並行輸入は、18年の市場規模が13.97万台(国機汽車のリポート)と、自動車市場全体から見ると微々たるものだ。ただし、取り扱っているのが「最も安い車 でも40万~50万元(約600万~750万円)」であり、高級車市場だけに絞るとその影響は決して小さいとは言えないだろう。

 中国政府は、中古自動車や並行輸入車の市場を積極的に拡大させていく方針を示している。実際に、中国商務部が19年4月に開いた記者会見では、自動車並行輸入の推進 、中古車販売の規制緩和について言及した。

 今後、中古自動車、並行輸入車の販売が増えれば、統計上の新車販売台数は伸び悩みを見せるだろう。しかし、それを単純に「景気減速」としてとらえるのではなく、ミ クロレベルにおける市場構造の変化が着々と進んでいるということも認識しておく必要があろう。