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1本10万円を超える超高級輸入ビール

「中国ってよく分からない」

 多くの日本人の感想だろう。政治、経済、社会システムが大きく異なるのは当然だが、それに加え中国を見えにくくしている大きな理由の一つに「多様性」がある。

 中国の中には先進諸国とほぼ変わらぬ一面と前近代的な一面が併存している。北京や上海などに代表される大都市では高層ビルが林立し、高級車を乗り回して高級ブランド品で身を固める者も少なくない。一方で、旅行で訪れたチベット自治区では、20歳前後の若者がヤクに木製農具を取り付け、一生懸命畑を耕していた。北京ですら郊外に行くと便所がないような家もまだ多くある。これら全てが一つの中国の中に共存している。

 このような多様性は日常生活における消費シーンでも垣間見ることができる。近年、生活水準の向上に伴い、一般庶民が日常的に行っている消費活動の現場は多様化が進んでおり、同じカテゴリーの商品でも価格帯の幅が日本よりも広い。

 その動向は嗜好品でより顕著に見ることができる。嗜好品の代表格ともいえるタバコ・酒を見てみよう。

広がる嗜好品の価格帯

 私が勤務する対外経済貿易大学のそばには多くのコンビニエンスストアが集中しており、日系のセブンイレブンも3店舗ある。そこで販売しているタバコを見てみると、最高値の「中華」は1箱75元(約1200円)だったが、最安値は7元(約112円)と実に10倍以上の差があった。

 一般的に、お酒の中でも価格帯が比較的広いのはワインだが、中国では日常的によく飲まれているビールも多様だ。

 北京で有名な地ビールは「燕京ビール」。北京の胡同(フートン、旧市の路地)を歩くと、上半身裸でこの燕京ビールを片手に雑談をする年配の男性を見かけることがある。北京の夏の風物詩だ。中でも、最も安いランクの「普通燕京」は、私が住む団地内にあるローカルスーパーでは、600mlの瓶タイプが4.5元(約72円)で売っている。瓶を返却すると1本につき0.5元キャッシュバックがあるため、実質4元だ。

 一方で、日本を含む各国の大使館が並ぶ「亮馬橋」エリアにある高級スーパーに、一本6666元(約10.6万円)と5555元(約8.9万円)の輸入ビールが置いてあり驚いた。これは極端な例だが、ローカルスーパーにも普通燕京と並んで30元(約480円)を超える輸入ビールが置いてあった。

 近年、若者を中心にはやっているのがクラフトビールだ。様々な種類のビールが、壁にずらりと並んだサーバーのタップからグラスに注がれ提供される。私が初めて北京でクラフトビールの専門店に行った2013年時点では、北京全体でも数えるほどしかなかったが、今では、専門店だけでなく一般の中華料理のレストランでも提供されるほどにまで広がりを見せている。

 私がよく足を運ぶ大学付近のクラフトビールバー「地下酒館」。お気に入りのIPA(インディア・ペールエール)は1杯50元(約800円)と比較的高めだが、中国人の若者に人気で飛ぶように売れている。