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官民挙げて人材育成

 中国政府は、高速成長期を終えて中高速成長期という新たな段階に突入した経済状態を「新常態(ニューノーマル)」と表現し、経済発展モデルをイノベーション駆動型へと転換しようとしている。

 その主要政策の一つに、多くの経済活動においてインターネットを活用する社会を目指す「互聯網+」(インターネット・プラス)がある。政策の実現に欠かせない人材が「デジタル農民」であり、中国国内では官民挙げて人材育成に力を入れ始めている。

 その代表格が貴州省だ。中国南西部の奥地にあり、経済発展が最も遅れた地域の一つだったが、国家級ビッグデータ総合試験区に選定され、現在ではグローバルのハイテク企業が集積する一大拠点へと発展を遂げている。

 貴州省は2016年、アリババグループと協力協定を結び、3年間で2500人のクラウドコンピューティング・ビッグデータの高度専門人材と、エンジニアなどの技術者1万人を育成する計画を打ち出した。

 翌17年アリババグループ傘下の「阿里雲計算公司」(アリババ・クラウド)は、「工業強省」を目指す貴州省が人材育成のために2013年に新設した大学「貴州理工学院」と、共同で「貴州理工学院・アリババビッグデータ学院」を開校し、人材育成に注力している。

 今後もこのような動きは加速していくと考えられる。実際に、2019年3月に開催された第13期全国人民代表大会(国会に相当)の第2回会議において、李克強首相が行った「政府活動報告」でも、「国家の発展に急ぎ必要とする技術・技能人材の育成を加速させる」と述べている。

 新たな経済成長のエンジンとして期待される「新経済」にとって必要不可欠な「デジタル農民」。中国経済の持続的発展のためには、単純にその数を増やすだけにとどまらず、彼らが自らを蔑むことなく、誇りをもって働ける労働環境づくりも必要となるだろう。

※【筆者注】「中国新経済」の発展過程、現状および今後の展望に関しましては、2019年4月に上梓した『キャッシュレス国家 「中国新経済」の光と影 』(文春新書)に詳しくまとめましたので、こちらをご参照ください。