
モバイル・インターネットの時代に突入し、すでにスマートフォン(スマホ)が社会のインフラとなった中国。スマホにインストールされた決済アプリをプラットフォームにして、これまでなかった新しいタイプのビジネスが次々に生まれ、それらが互いに結びついた巨大なエコシステム(ビジネスの生態系)がダイナミックに広がっている。
無人コンビニなど「買う」場面、フードデリバリーなど「食べる」場面、ライドシェアなど「移動する」場面、無人カラオケなど「遊ぶ」場面など、生活の様々な消費シーンにおいてモバイル決済が使われている。
これらだけではなく、公共料金の支払い、レストランでの割り勘などユーザー同士の送金、ご祝儀やお年玉、宗教施設でのお布施や災害義援金の支払いにいたるまで、ありとあらゆる場所でモバイル決済が利用されており、財布を持たずにスマホ一台で生活できる社会が実現している。
これが「中国新経済」の現在の姿だ。

この「新経済」分野においては、プラットフォーマーであるアリババやテンセントといった大手IT企業に注目が集まりがちだが、ミクロレベルにおいて「縁の下の力持ち」となっているのが、様々なデジタルサービスをスマホ上で実現させる技術者たちである。
過去になかった全く新しいサービスも、既存のサービスにおいて顧客の新需要を吸い上げ新たな機能を追加する「微創新」(わずかなイノベーション)も、現場の技術者たちがいて初めて社会に実装されていく。
デジタル社会となった中国に必要不可欠な彼らであるが、自らを「数碼農民(デジタル農民)」略して「碼農」と呼ぶ。「三農(農村・農業・農民)問題」が社会問題となっている中国において、この「農民」は時として「貧困」、「苦労」の代名詞として用いられるネガティブワードだ。
彼らはなぜ自嘲するのだろうか。北京の某企業で、この「デジタル農民」を管理するマネジャーに話を聞いた。
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