ネット上で拡散された、シェア自転車に偽QRコードのシールを貼り付ける詐欺の動画
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キャッシュレス社会のデメリットとは

 一方で、キャッシュレス社会の急速な発展には、「光」の一面ばかりではなく、「影」の一面もある。

 デメリットの一つとして考えられるのが個人情報問題だろう。「無料で便利」なモバイル決済は、金銭的には無料だが代価として支払っているのが個人データだ。プラットフォーム企業は、無料でサービスを提供する代わりに個人データを収集し、それを使って収益を上げている。

 中には、自分の個人情報を提供するくらいなら現金社会の方がいいと考える人もいるだろう。拙速で過度なキャッシュレス化は、これらの層の人々にとって極めて不便な世の中となってしまい、ひいては社会の不安定を招く可能性も否定できない。

 これ以外にも、私が中国で生活していて感じるもう一つのデメリットに「デジタル格差問題」がある。中国のキャッシュレス比率が日本と比べて高いとはいえ100%ではない。当然、高齢者を中心にスマホを使えない「スマホ難民」が一定割合存在する。これらの層とスマホを使いキャッシュレスの恩恵を受けている層との格差が広がっているのは事実だ。

 その一例として配車サービスが挙げられる。現在北京では、配車アプリを使って簡単にタクシーを呼べるようになった。その一方で、以前と比べると流しのタクシーを捕まえるのが難しくなってきており、スマホが無いとタクシーすら乗れないような社会になろうとしている。

 実際にスマホが故障して一時使えなかったことがあったが、今の北京は、スマホ無しでは不便な社会になっていると改めて認識した。

新たな手口の犯罪が出現

 現金に変わる新たな決済手段が普及し始めると、泥棒やスリなどの現金を狙った犯罪が減少する一方で、これまで無かった新たな手口の犯罪が次々と明らかとなってきた。

 消費者が自分のスマホで店舗側のQRコードをスキャンする「静的QRコード式」でよくみられるのが、店側のQRコードを差し替えて代金をだまし取る手法である。

 例えば、お店に貼ってあるQRコードを差し替えるパターンやシェア自転車に偽のQRコードをシールを貼り付けるパターンなど、手口は様々だ。中には、QRコードを記載した偽の駐車禁止違反ステッカーを車に貼り罰金をだまし取るという手口も現れている。

 また、不正に入手したSNSアカウントを使った「なりすまし」詐欺や病気と偽って治療費を集める募金詐欺など、決済アプリを使って簡単に送金できることを悪用した詐欺も後を絶たない。

 世の中のいかなるものにもメリットとデメリットがある。それでも、キャッシュレスに関しては、実際に北京で生活する私はメリットの方が大きいと感じる。

 経済産業省が発表した「キャッシュレス・ ビジョン」において、2025年までにキャッシュレス決済の比率を40%にまで高める目標を掲げ、官民ともにキャッシュレスに向けた動きが活発化している日本。中国の先行事例などを参考にしながらデメリットの悪影響を抑えつつ、最大限にメリットを享受できるよう、積極的にキャッシュレスを普及させてもらいたい。

この記事はシリーズ「西村友作の「隣人の素顔」~リアル・チャイナ」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。