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馬車で殻付きクルミを販売する農民。当然モバイル決済にも対応している。(2018年10月、筆者撮影)

 経済産業省が2018年4月に「キャッシュレス・ビジョン」を発表し、モバイル決済においてメガバンクもQRコード(2次元バーコード)の規格を統一することで合意した。銀行以外にも、ヤフーや楽天、LINEなどのIT系、セブンイレブン、ローソンなどのコンビニ系、ドコモ、ソフトバンクなどの通信系企業もこのモバイル決済事業に参入し、キャッシュレス社会の実現に向け様々な動きがみられるようになってきた。

 また、2019年10月に予定されている消費増税に伴う景気の落ち込み対策として、キャッシュレス決済時のポイント還元も予定されている。「平成」が終わり元号が「令和」となる2019年は、後に「キャッシュレス元年」と呼ばれるようになるかもしれない。

 中国のモバイル決済は2014年頃から爆発的に普及が始まり、この数年間の実践で多くの経験を積み重ねてきた。今後日本でキャッシュレスが進んでいくとなると、今の中国の動向は日本にとっても貴重な参考材料になるだろう。

 中国におけるモバイル決済普及の背景に関しては「中国ではどうやってモバイル決済が広まったのか」を参照。

 モバイル決済が当たり前となった中国では、徐々にその「メリット」と「デメリット」が明らかになってきている。

日本で流布する「偽札説」の誤解

 「中国には偽札が多く流通しているからキャッシュレスが進んだ」という話を日本ではよく耳にする。まずは、この「偽札説」の誤解を解いておきたい。

 もし偽札流通がキャッシュレス普及の主要因ということであれば、中国よりもさらにキャッシュレスが進んでいるスウェーデンは、中国よりもひどい「偽札大国」ということになるだろう。

 そもそも中国に先んじてデビットカードやクレジットカードといった、旧来型のキャッシュレス・ツールが普及していた国も多いが、その主要目的はあくまで決済の利便性向上であり、偽札対策だけではなかったはずだ。

 偽札とキャッシュレスの普及に全く関係が無い、と言っているのではない。社会に偽札が出回っていたこと自体は事実だ。しかし、それはあくまで数ある「現金使用コスト」を高める要因の一つに過ぎない。

 キャッシュレス化が進んだことで、決済の利便性が高まり、経済的、時間的コストが大幅に低下した。その一例を紹介しよう。