安藤:なんですかね……いい人ばっかりでしたよ、本当に。なにより利用者さんの気持ちをすごい尊重する。これは、今の目で見るとルール的にあんまりよくはないんですけど、介護福祉士制度が始まる前からやっていたところなので、誤解を覚悟で言えば、対等な、友達感覚で利用者さんと接したりしていた時期もあります。基本的にフレンドリーな、アットホームなところだったので、スタッフとしてもすごく居心地が良かったですね、楽しかったですし。
松浦:それはすごいですね、抑圧的じゃなかったんですね。
安藤:まったくなかったです。一応、朝昼晩のご飯があって、寝る時間、起きる時間、お風呂の時間というのはある程度もちろん決まっていますけど、それ以外は自由なところでしたね。
Y:介護の施設というと、利用する側からは、やりたくもないお遊戯、やりたくもない集団生活、個性を全然認めてもらえない、そんなすごくネガティブなイメージが今でもまだあると思うんですよ。
松浦:あるね。
Y:でも、実際は松浦さんの今度の本が明らかにしているように、実際の姿は施設によってかなり違う。「あなたの知らないグループホームの世界」と帯を付けたんですけれど、前回もお話に出たように、やっぱり自分も含めて、介護ということから世の中が目をそらしていることもあって、パブリックイメージがなかなか変わりにくいですよね。となると、そこで働こうという人も出てきにくい。
安藤:そうですね。本当は将来の夢で、看護師になりたいとか、医者になりたいと同じぐらいのポジションでいいと思うんですけどね。
介護は本当に好きな職業です
松浦:これは自分もそうだし、介護を経験した知人はみな口をそろえる感想なんですが、介護は、家族にとっては自分の生命力を削られていくような気持ちにさせられるものなんですよね。それが仕事だったら、ポジティブに変わるんでしょうか。
安藤:あくまで自分にとってはですけれども、本当に楽しく好きな職業です。精気を吸われる職業でしかないなら、そこまでは思えないでしょう。家族ではなくプロの第三者として接する、それもチームで接することで、だいぶ話は変わってくるんじゃないでしょうか。それに、さっき言った折り紙じゃないですけど、ちょっとしたことで、あ、こんなに心が通じてくれるんだという積み重ねって、すごく豊かなものを受け取ることになるんですね。
ただし、生活面での不安要素、お給料、これはしっかりしてほしい。自分は今働いてはいないので、責任を持ったことは言えませんが、あんまりいい声は聞かないです。ケアする側の生活が困窮していたら、それどころではないですよね。別に介護に限らず、どんな仕事でもそうだと思いますが。
松浦:ですよね。
安藤:ボランティア精神っていい響きのようでいて、そこに甘えている人たちがいる気はするんですよ。「ボランティア精神あるんですよね、じゃあ、別に給料いらないですよね」というふうに結び付けられちゃうと、それは違って、ちゃんとしたお仕事として見ていただいて、ちゃんとした対価が必要だとは思います。
松浦:東京オリンピックでありましたが、基本的に行政がボランティアを求めるのは良くないですね。行政による住民に対する搾取になってしまう。
安藤:本当にそうです。
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