母親を自宅で単身介護した2年半の壮絶な実録『母さん、ごめん。』から5年。グループホームに入居した母親の介護をつづった続編『母さん、ごめん。2 50代独身男の介護奮闘記 グループホーム編』を上梓(じょうし)した科学ジャーナリストの松浦晋也さん。

 そして、高校時代から介護の仕事を経験し、ヘルパー2級の資格も取得、『知っトク介護 弱った親と自分を守る お金とおトクなサービス超入門』を介護・暮らしジャーナリストの太田差惠子さんとの共著で出版した「メイプル超合金」の安藤なつさん。

 自分の親を施設の介護に預けること、他人の家族に対して介護のプロとして接すること、それぞれの面から、語り合っていただきました。テーマは重いですが、お二人の掛け合いはとっても軽妙。ぜひ、楽な気持ちで最後までどうぞ。

安藤なつ(メイプル超合金)
1981年1月31日生まれ 東京都出身。2012年に相方カズレーザーと「メイプル超合金」を結成。ツッコミ担当。15年M-1グランプリ決勝進出後、バラエティーを中心に女優としても活躍中。介護職に携わっていた年数はボランティアも含めると約20年。ヘルパー2級(介護職員初任者研修)の資格を持つ。厚生労働省の補助事業『GO!GO!KAI-GOプロジェクト』の副団長。
松浦晋也
ノンフィクション作家/科学技術ジャーナリスト 宇宙作家クラブ会員。1962年東京都出身。慶応義塾大学理工学部機械工学科卒、同大学院政策・メディア研究科修了。日経BP社記者として、1988年~92年に宇宙開発の取材に従事。その他メカニカル・エンジニアリング、パソコン、通信・放送分野などの取材経験を経た後、独立。宇宙開発、コンピューター・通信、交通論などの分野で取材・執筆活動を行っている。

編集Y(以下、Y):松浦さん、安藤さんの本を読んでのご感想はいかがですか。

松浦 晋也(以下、松浦):いや、もう本当に、自分の母親の介護が始まったときにこの本があったら。僕が母の介護のために頑張って調べて書いたことは基本的に全部、理路整然と書いてある。

Y:分かりやすいですよね。これは、実際に共著の方(介護・暮らしジャーナリストの太田差惠子さん)と安藤さんが会話を繰り返して。

安藤 なつ(以下、安藤):はい、いろいろ教えてくださって。自分は介護の専門職として現場で働いた経験はありますし、資格の勉強も続けていますが、仕組みの理解は全然なんです。ですのでナビゲーター的な感じで、なにより介護に興味を持ってもらえれば自分としては一番ありがたいなと思って。

松浦:「こうなったら施設に預けることを考えましょう」などの図版がいいですね。感情ではなくて、アルゴリズムで判断できるようになっていて。(※91ページ「施設入居はこんなことを目安に決断」)

安藤:各ご家庭で本当に考え方も違うし、「まだ大丈夫」と思っていても、周りから見たら、「いやいやいや、全然大丈夫じゃなさそうだけど」みたいなところまで(家族で面倒を)見られる方もいらっしゃると思うし。実は、家族以外では気づけないぐらいの段階で、相談に行けると本当はその先が楽になるんですよね。

(写真:大槻純一)
(写真:大槻純一)

介護は親のお金で見るべきか

Y:お金の話もその場にならないと分からないと思いました。「子どもが親の財産を把握するんだったら、認知症に入る前でないとだめだ」というのも、そりゃそうで、当たり前なんですけど、気が付かないですよね。

安藤:そうです。この本には「親のお金から、親の介護のお金を捻出すべきだ」ということが書かれているんですけど、自分もそれを知るまでは「ああ、お金どうするんだろうな、私が出すのかな」くらいで考えていました。

Y:自分の話で申しわけないんですけど、私も田舎の親の介護が始まったときに、まあ親の面倒は子どもが見るんだろうぐらいに思い込んでいたんです。ところがうちの奥さんがしっかりした人で、新幹線代からホテル代から、全部お母さんのお金でやってくださいと言われて、実は結構衝撃だった。えっ、そんな冷たいこと言うの、と。ところが、よく考えたらそれで当たり前なんですよね。

安藤:はい。その通りです。なぜ当たり前かといったら、「いつまで介護を続けるのか」ということですよね。

次ページ ホームに入った後もいろいろ起こる