これを読んでいる方のほぼほとんどが、「親の介護」と向き合い、また、これから向き合っていく時期がやってきます。ついつい目を背けて日々の仕事に逃げ込みたくなるところですが、ちょっと待った。読んでおくだけでも「そのとき」のトラブルや心の痛みが軽くなるテキストが、世の中にはあるのです。例えば、この対談がそうです。
母親を自宅で単身介護した2年半の壮絶な実録『母さん、ごめん。』から5年。グループホームに入居した母親の介護をつづった続編『母さん、ごめん。2 50代独身男の介護奮闘記 グループホーム編』を上梓(じょうし)した科学ジャーナリストの松浦晋也さん。
そして、高校時代から介護の仕事を経験し、ヘルパー2級の資格も取得、『知っトク介護 弱った親と自分を守る お金とおトクなサービス超入門』を介護・暮らしジャーナリストの太田差惠子さんとの共著で出版した「メイプル超合金」の安藤なつさん。
自分の親を介護施設に預けること、他人の家族に対して介護のプロとして接すること、それぞれの面から、語り合っていただきました。テーマは重いですが、お二人の掛け合いはとっても軽妙。ぜひ、楽な気持ちで最後までどうぞ。
松浦 晋也(以下、松浦):デビューする前から、ずっと介護の現場で働いておられたんですよね。
安藤 なつ(以下、安藤):そうですね。伯父の家が小規模のデイサービス(利用者の自宅へ送迎を行い、日帰り型の介護サービスを提供する施設)を始めまして、一軒家を改装してやっているうちに規模が大きくなって、宿泊からグループホーム、みとりまでやるようになって。
松浦:だんだんビジネスを広げていった伯父さんがいらした。
安藤:そうなんです。私は伯父の家に遊びに行く感覚で、中学生のときから毎週土曜日に泊まりがけでボランティアをしていたんですね、3年間。高校からはアルバイトができるので、お給金をちょっとずつもらいながらやっていました。
松浦:どんなお仕事を?
安藤:おむつ交換やトイレ、入浴、食事の介助、口腔(こうくう)ケア、レク(レクリエーション)、ご飯の支度、一通りなんでもですね。

お笑いと介護が同時進行
松浦:そちらで働きながら、お笑いのほうも始めていたんですか。
安藤:そうですね。漫才とかお笑いは16歳から始めたので同時進行というか、高校に行ってお笑いをやって、介護やって、みたいな、
松浦:お笑いと介護、ちょっと異色な組み合わせですよね?
安藤:そうかもしれませんけど、自分としては別に……。こう言ったら不謹慎にも聞こえるかもしれないんですけど、どちらも好きでやった、というか、楽しんでやっていたので。
松浦:好きでやっていた。お笑いも、介護もですか。
安藤:介護は大変とか、そういうイメージが付く前にその世界に行ってしまったこともあるかもしれませんが、今でも好きな仕事です。あ、もちろん大変ですよ。大変なときもあります。けれど、介護は自分にとっては好きな職業ではありますね。
松浦:ずっと伯父さんの施設で働かれたのですか。
安藤:自分が19歳か20歳ぐらいのときにいったん伯父の施設から離れまして、ヘルパー2級の免許を取って、別の事業所で働き始めました。それまでは障がい者の方がメインだったんですけど、そこからは深夜の巡回介護を。在宅介護の利用者さんのおむつ交換と安否確認をするという。一晩で15軒ぐらい回っていました。
松浦:一晩で15軒。
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