令和2年(2020年)度の厚生労働省の調査で、調査に参加した中学校の46.6%、全日制高校の49.8%が「ヤングケアラー」の存在を認めています。「家族の介護」が理由で学校に通うことができなかったり、明るい未来が描けない状況下にない、とした中学2年生が5.7%(約17人に1人)。
なかなかショッキングな数字ではないでしょうか。
ヤングケアラーが生まれる経緯
具体的にどんな家族構成だと、子どもがヤングケアラーになりやすいのか。
例えば今、息子さんが4歳で、両親は60代後半で元気。あなたは何の問題もなく働くことができていたとします。10年後、息子さんが14歳になったとき、両親は後期高齢者となり80歳が目前に。
・近くに住む認知症になり始めた母親(息子にとっては祖母)のことを「ちょっと、おばあちゃんを見ていて」と頼む
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・息子は幼い頃に働く両親に変わってすごくかわいがってもらった思い出もあり、「おばあちゃんのお世話をしなくちゃ」と責任感が湧き、喜んで面倒を見る
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・「ありがとう、助かった」「おばあちゃんも喜んでいる」と母親に感謝され、お小遣いをもらい達成感を得る。さらには、ご近所さんも「お孫さん、えらいわね」と褒めてくれる
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・息子はこれによって「良いことをしている」と自身の行動を強化し、お母さんが忙しいときは率先して自分が祖母のお世話をするようになる(その結果、祖母の認知症が進んでいても周りは事態になかなか気づかない)
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・息子は若くて体力があるため、最初のうちは学校と両立できているが、祖母の認知症の進行とともに介護がどんどん大変になり、疲労が溜まり学校に行っても寝てばかり。授業に付いていけず、友人との会話もすれ違いになり、ついには不登校に
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・常に家にいるようになるが、母親も介護をしてもらえると助かるので、「とりあえず……」と子どもに頼ることをやめられない
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・数年後、祖母が亡くなる。友人たちは高校、大学と進学をして、社会で活躍しているのに、介護経験しかない息子はニート状態となり、後々の人生にも大きな影響が及んでしまう
「いくらなんでも、飛躍し過ぎ」という声もあるかもしれませんが、まったくそんなことはありません。
例えばあなたが収入面で家族を支えている立場になったら、あるいは、海外勤務も含めた遠距離への転勤などで単身赴任となったら、「子どもに介護を任せるなんて、絶対しない」と言い切れますか? 詳細は『 ヤングケアラー発生防止への提言~子どもを介護の担い手にしないために~』を参照してください
さらに、ヤングケアラーには介護する立場としての決定権がありません。どういうことかというと、認知症になった祖母に公的な介護保険を利用して、デイサービスに通ってもらう、ショートステイを利用する、老人ホームに入所してもらう、これらを決定するのは、すべて親です。
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