でも、面会の回数を増やせば忘れないかといえばそうではないのです。

 また、逆の話で、「忘れられてしまったのならば、もう、面会に行っても仕方がない」と来訪頻度が激減するケースもあります。

 繰り返しになりますが、どちらも気持ちはよく理解できます。そして、どちらにしても、自分の心の中の「子どもとして覚えていてほしい」という気持ちが、逆にあなたをつらくしていることにも、気付いていただけたら、と思います。

 子どもとして願うべきは親の平穏な生活。
 であれば、いずれにしても「自分が親の記憶をしっかり持ち続けていればいい」。

 そうはいっても自分の気持ちが波立つことはあるはずです。そのときにしっかり支えてもらうためには、介護のプロとの関係性をしっかり築いていくことが極めて重要になります。

自分の気持ちを介護スタッフと共有しましょう

 どうか、気持ちをシフトチェンジしてください。
 支える側のスタッフにとっても、入所者さんとご家族との関係性を把握しておくことはとても重要です。例えばスタッフが「この方は親御さんととても仲が良かったから、相当なショックを受けるだろうな」と認識していれば、自然と対応は丁寧になるので、ショックを受けたとしても、ご家族の心の癒え方が違ってきます。

 家族の機微に触れる情報、悩みや苦しみを、心を開いてスタッフに打ち明けることができれば、考えたくない事態に直面しても、「ご家族はおつらいでしょう」とスタッフが理解し、共に支えてくれます。

 ただ、社会的に立場のある方であればあるほど、そういった心の機微を表には出さす、第三者に隠す傾向があります。そのため、スタッフ側は「ご家族に対して、どういう声かけをすればいいのか……」とものすごく緊張することになります。

 親があなたのことを忘れていようがいまいが、ショックを受けているあなたのことも含めてフォローできるような体制をプロと一緒につくっていくほうが、みんなが心穏やかにいることができるからです。

 例えばスタッフから「今日はお母様の機嫌が良いので、面会にいらしたらお話ができるかもしれませんよ」「日中は息子さんの自慢話をされるときもありますよ」などと事前に教えてもらえれば、心穏やかに「自分を忘れた親」と接することができるのではないでしょうか。間にプロに入ってもらうことで、認知症の親と上手に心の距離を取っていくことが必要なのです。

 間にプロが入ることで、徐々にでもショックは緩和されていきます。自分を忘れたり、疑ったりする親を一緒に支え、親が忘れてしまった記憶を共有する介護のプロと確かな信頼関係を築いていく。それができていれば、多くの人が恐れているであろう、いつかやってくる「その日」を、上手に乗り越えていけるのではないでしょうか。

この記事はシリーズ「介護生活敗戦記」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。