そう「有給休暇」ではなく、介護休暇や介護休業を使って「要介護の家族のためになる」対策をプロと一緒に考えてもらうように促すのです(コロナ禍で直接会うことが難しい現在は、電話での相談を提案してみてください。もしかしたら、直接会っての相談を提案するよりスムーズかもしれません)。
もしかして、まだピンとこないでしょうか。
介護は「個人的なこと」ではない
この方がすばらしいのは、たいていの社員が「介護は個人的なこと」と思い込んでいるのを理解していることです。外部の支援、まして会社のサポートを要請するなんて、と、自分で抱え込もうとする。それは必ず破綻し、その結果介護離職が起きる。
そもそも、相談者本人が包括やケアマネジャーに「親のことを考えると、自分から相談しづらい」「まだ、自分だけで頑張っていける」と、外部サポートに二の足を踏んでいるケースは少なくありません。仮に、一歩踏み出そうとしても「まずは有給休暇を使ってから」となるわけです。
そこを、会社側から「介護で外部サポートを受けるための準備は、立派な『介護休暇』の対象です」と提案することで、「介護はあなただけが抱え込むことではありません。会社は、あなたたちの介護をサポートしますよ」という姿勢をはっきり見せている。ここがすばらしい。
さらに、「あなたが言いづらいのであれば、今聞いた話を包括やケアマネジャーに私から話をしてもいいですか?」と伝え、「うちの社員が親の介護のことで悩んでいる。ついてはそちらで相談に乗ってもらいたい」と、電話で伝えている。もう満点です。
そして実はコレ、包括やケアマネジャーにとっても、非常に喜ばしいことなのです。相談者が働いている会社の雰囲気までは彼らは知ることができません。
「職場は協力的だ」という姿勢を現場のプロに早い段階から知ってもらうことができれば、その後の介護の体制づくりに際して、「これこれを職場に相談してみては」というアイデアが出しやすくなり、相談者にとっても、仕事との両立がスムーズに進んでいくのです。もちろん、企業にとっても社員の生産性を維持できることになります。
生産性よりも重要なのは、ここまで、人事・労務の担当者や上司が対応してくれることで、社員が「この会社は、自分のことを大切に思ってくれている」と、感じることです。相談者は介護離職を踏みとどまり、仕事と介護が両立でき、会社も大切な戦力が失われないばかりか、社員全体の会社に対する帰属意識やロイヤルティーを高めることができるでしょう。
まわりの対応で介護離職は必ず減らせる!
働く人にとって一番身近なコミュニティである職場、そこでの相談役である人事・総務担当者や上司が早い段階からサポートできれば、望まない介護離職は確実に減らせるのです。
もしこうした手を打つなら、早ければ早いほど有効です。早期にプロに相談すればサポートが充実し、それによって家族のストレスが減り、なにより介護を受ける側の抵抗感が少なくなる。連載で何度もご紹介している通りです。
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