2:説明を聞く中で、その人が一番困っていることが可視化される

 口頭で説明してもらうことで、その人の気持ちの抑揚が見えてきます。表情にも注意しましょう。どこがその人の一番の困りごとになっているかが可視化されるのです。

3:可視化された「介護で困っていること」を聞く

 実は「介護で困っていること」を、人に話し、聞いてもらうことこそが、相談者の救いになります。

 私の相談でも、口頭での説明を終えたあと「介護の悩みを話せる相手がいなかった」と、みなさんが口々におっしゃるのです。個人的な話だから、他人の時間を取って打ち明けるのは申しわけない。あるいは、相談したところで何も変わらない、と思っている。しかし実際は、悩みを口に出すだけで、相当、その重みは減るのです。

 前回のコラムでお伝えした“親孝行の呪い”にも通じるところがありますが、「『介護をしている親に対して、こんなヒドイことを考えてしまった』と、話せる人がいなかった」と、時に涙ながらに話す人も少なくありません。心に抱え込んでいた思いを吐き出す「だけ」でも、その人にとっては涙を流すほどの大きなサポートになります。

アドバイスする必要はありません

 聞く側のあなたは、「相談されているんだから、何かアドバイスしなければ」と焦ってはいけません。大事なことは、「否定」しないこと。介護経験がない場合「親に対して、そこまで思うか?」と仮に感じたとしても、そのまま受け入れて、最後まで話を聞くこと。そして聞くことだけなら、介護の知識も経験も必要ないのです。

 聞いただけではなく、何か前向きなことをしてあげたい、と感じたならばどうするか。

 「今、話したことをそのまま、地域包括支援センター(以下、包括)の職員や担当ケアマネジャーに伝えてみてください」と、相談者に伝えましょう。一度言葉にしたことならば、二度目はかなり抵抗感も薄れ、話の筋道も整ってきますから、先方も対応しやすいはずです。

 「状況」を聞く→「否定」せずに受け入れる→「包括」につなぐ
 これだけでも、介護離職者の数はかなり減ると考えています。

 逆に、「個人的な悩みだから、みんな自分で解決するしかないよね」「君の人生まで会社は責任は持てない」といった、孤立感を深める言い方や、親を介護する苦しみを「でもみんな越えている道だから」「君も年を取れば同じことになるんだし」「仮にも親に対して、そんなことを思うべきじゃない」といった、「親孝行の呪い」をさらに掛けるような言動は、絶対に避けるべきです。

「ファンタジスタだ」と感じ入った介護離職防止策

 企業の方からの相談を受ける中で「これはもう、介護離職防止のファンタジスタじゃないか?」と、言いたくなるような、パーフェクトな対応をされている担当者に出会ったことがあります。

 この方の対応をざっくり言ってしまうと、相談に来た社員に、包括や担当ケアマネジャーに相談するために、介護休暇や介護休業を利用するよう、提案されていたのです。

 「なんでその程度がファンタジスタなんだ?」と感じる方は、文章を読み直してください。「介護休暇や介護休業を使って」というところ、ここがポイントです。

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