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 自分の親が要介護状態になったとき、“親孝行の呪い”と同じくらい高い心の壁に「元気だったころのお父さん、お母さんのイメージが捨てられない」というものがあります。

 「もとの親に戻ってほしい」という自分の気持ちに駆り立てられて、認知症が進んでいる親に、算数ドリルを無理やりやらせてしまい、お互いにストレスをため込んだ結果、子どもは言うことを聞かない親に手を上げる。介護をしている子どもは、「親を殴ってしまった。でも、自分は、こんなに親のことを思っているのに…」と悩みが深まっていきます。完全に親孝行が空回りしている状況です。これでは仕事どころではありません。

 受け入れがたい親の変化を受け入れていくためにも、プロであるケアマネジャーの存在は重要になります。なぜなら、プロとしての冷静な判断をしながら、介護する家族とともに要介護者である利用者の思いをかなえるために「今、優先すべきことは何か」を一緒に考えるのが、ケアマネジャーの大切な仕事だからです。

 ときには、ケアマネジャーから介護する家族にとって耳が痛いことも言われるかもしれません。親の介護度が上がっていくこともあるでしょう。それでも「うちのお父さんもそういう段階になったか。でもケアマネジャーのサポートで生活は落ち着いているし、何かあったときはまた相談に乗ってもらおう」と、信頼関係をベースに安定した精神状態でいられれば、仕事にも大きな影響はないはずです。

 そのうちに「元気だったころのお父さん、お母さんのイメージが捨てられない」という心の壁を少しずつ越えて「自分が元気に働いていることが、何よりも重要な親孝行」と思えるようになると思います。

介護が必要になったときこそ、本当の“親孝行”を

 「あなたはどんな顔を、親に見せていますか」

 いつも怒った顔で介護をしていませんか? 
 介護されている親も辛い顔をしていませんか?

 “親孝行の呪い”に縛られ、ベッタリ親の隣に張りつき、夜も寝ずにオムツ替えをして、心身ともに疲弊する。それが、本当に親孝行なのでしょうか。

 繰り返しになりますが、介護が必要になっても、仕事も含めた自身の生活を大切にした程よい距離感を維持するために、早い段階から外部サービスを利用して、無理なく関わること。

 それによって「いい顔」で親の前に立てることこそ、一番の親孝行。
 私はそう考えています。