家族から今こそ「感謝の気持ち」を伝えよう

 緊急事態での対応について話し合いをしながら、もうひとつ、懸命に働いているスタッフに「感謝の気持ち」を、一緒に伝えていただければと思います。これは今、私の個別相談を受けたすべての方にお願いしていることです。

 「働いているスタッフの中にせきをしている人はいますか?」
「帰宅後に熱が出たけど、そちらでうつされたのでは?」

 “自分の不安”と上手に向き合えていないと、つい、不安を煽ったり、相手を責めたりするような発言になりがちです。しかし、“自分の不安”と上手に向き合い、現場のスタッフと話し合いを重ねていれば、おのずと感謝の言葉が湧いてくるはずです。

 あなたの声掛けひとつで、現場の士気が、モチベーションが高まることがあることを忘れないでください。それが、家族だからこそできる大切な役割だということを知ってください。

 この記事をまとめてくれているライターの岡崎さんの介護仲間が、手作りのマスクを母親が利用しているデイサービスに寄付し、大変喜ばれたそうです。感謝の気持ちをこういった行動に移すことも介護スタッフの大きな支えになるでしょう。

 普段は伝えることが難しくても、緊急事態の今だからこそ、感謝の気持ちを言葉にしたり、行動で伝えたりすることで、信頼関係をより確固たるものにできる機会だと捉えてください。

“死生感”を、新型コロナウイルスに問われている

 新型コロナウイルスによって、これまで親や介護に対して抱えていた潜在的な不安が浮き彫りになった人がたくさんいることは間違いありません。

 自分自身も、「老いた親はいつ死ぬか分からない」と、改めて気づかされる機会となりました。

 一方で「いつ死ぬか分からない」ということは、交通事故でも新型コロナウイルス以外の病気でも同じです。特に要介護者であれば、毎回の食事のたびに誤嚥性肺炎に気を付けなればならないなど、日々、リスクと隣り合わせの日々を過ごしています。広く考えれば私もそしてあなたも(すみません)、今日、事故に遭うなどしてこの世を去る可能性はあるわけです。

 「どのように生きたいのか、どういう形で最期を迎えたいのか」
 要介護者だけではなく、今、私たち全員が問われているのかもしれません。

 自身の死生感、親の、家族の望む死生感を知っていれば、それは、また、同じような危機がやってきても、不安におびえるだけではなく、向き合う手がかりになるはずです。

 親が元気ならば、この機会に電話やオンラインで改めて、話をしてみませんか。

 既に認知症などにより話すことが難しい状態にあるならば、“自身の死生感”とともに、“親の死生感”についても考えてみてください。それこそが、子どもとして親にできる最後にして、最高の親孝行だと私は考えています。

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