改めて思えば、家族介護というのは緊急事態の連続です。

 転倒からの骨折、脳梗塞の再発、認知症の進行などがいつ起きるか分からないのです。不測の事態に対応できる体制が、実は家族介護には必要です。何より必要なのは、介護スタッフと家族との信頼関係、そして「あのときに話し合ったことを踏まえて………」と、“そのとき”に言えるかどうか、です。

 そして「“そのとき”が来ても、考えてある」と言えること。これが、不安と向き合い、無用な動揺を起こさないための、唯一有効な方法なのです。

 新型コロナを機会に、今、考えて、行動し、話し合っていただくことで、今後も必ず訪れるであろう、介護にまつわる自分の不安と上手に向き合う、変化に強い体制を構築することができるでしょう。

介護サービスを細く長く続けてもらうためには、痛み分けも必要

 新型コロナの影響下で介護スタッフといい関係をつくるための、具体的なお話もしましょう。

 あなたの家族が要支援や要介護の状態で、今も介護サービスの提供が続いていて、状態が安定しているならば、どうやってそれを長く続けていくか、が課題になります。

 例えば、新型コロナ対策でデイサービス(通所型の介護サービス)のスタッフが不足し、従来通りのサービス提供が難しくなっているところが出ています。

 こういう場合には「週4日通っているデイサービスを新型コロナウイルスの問題が終息するまで週2日にして、残りの2日はホームヘルパーや宅配弁当を利用する」といったように、サービスの組み替えをする手があります。

 デイサービスは、人とのふれあいが行える場所です。これにより、その機会が減ってしまうことは否めません。一方、デイサービス側にとっては、利用者の数が半分になれば、何とか支援を継続できる可能性が上がります。

 デイサービスで行っていたすべてのサービスを家族でフォローしたのでは、ストレスが増してしまいます。そこは代替サービスで補完する。要介護の親、自分、施設、みんなが痛み分けをするような対策をいっしょに考えることが、チームを強くします。もちろん、家族側にもメリットがあります。親を直接支えることでどうしても発生する家族関係の悪化を防ぐことができ、介護の役割を負わないでおくこと(家族は実際の介護をすべきではない、と、常々申し上げている通りです。罪悪感を持つ必要はありません!)で、新型コロナが終息したときに、スムーズに仕事に復帰できるでしょう。

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