その結果、自分自身ががっちり向き合ってこなかったならば当然なのですが、「親の介護の現状」に自信が持てなくなり、感染症が流行する中で「ほったらかし」にしているような自責の念が芽生えてしまって、なにがなんでも自分で面倒を見るべきだという思いにとりつかれてしまう。そんな事例が多いように思います。実際に、「面会謝絶で会えないから」と、老人ホームに入居していた親を自宅に戻し介護を始めてしまうケースも出てきました。
当欄で何度もお話ししている通り、介護は親に対する「贖罪」「責任」の意識で、自責、自罰の思いでやってはいけません。
客観的に「親は何が一番幸せなのか」を考えるところから始め、合理的に「それをどうすれば、最小のリソース(時間・費用・労力)で実現できるのか」を、ビジネスの視点を入れて実施すべきです。そのためのブレインとしてケアマネジャー(ケアマネ)、現場スタッフとして、ヘルパーや介護施設の人々がいるのです。
「今が親孝行をするとき」と行動に移したくなる気持ちも分かります。
ですが、その前に改めて「親にとって安心できる介護体制」について、考えていただきたいのです。繰り返しが多くなってしまいますので、具体的には前回、前々回をお読みいただきたいのですが、感染症が流行する中、親にとって一番安全なのは介護施設であり、介護サービスです。
さて、「そうはいっても、そのサービスがいつまで機能するのか」という不安はごもっともです。すでに介護サービスを利用している場合、親元に行ったり連れ帰るのはNGとするなら、どう対処すべきでしょうか。
悩む前に、チームビルディング!
まずは、ケアマネや地域包括支援センターに「介護サービス提供の自粛や停止があった際に、今の支援の中で優先すべきことは何か?」を相談することです。そして、対策を立てましょう。
「親のために、どんなサービスならば利用できるか」は、ケアマネや包括のほうがあなたよりも圧倒的に知識があります。使わない手はありません。仮に現状のサービスに利用制限がかかったときに、どのサービスを取捨選択すべきかについても、日ごろ親の様子を見ているヘルパーやスタッフからの情報を基に、介護が必要な本人の望む暮らしから、客観的な情報を提供してもらえます。
考えてみれば、これは大きなチャンスでもあります。
自分自身が親の介護と向き合う機会になる、ということが1つ、そして、介護スタッフと何でも話し合えるような関係を築くきっかけになる、ということがもう1つです。
「新型コロナでサービスが制限されたら」という心配は誰が考えてもまっとうかつ緊急性があります。包括やケアマネも、当然考慮し、あるいは悩んでいるでしょう。ビジネス上でも、課題を共有するのはチームビルディングの条件であり、危機感は、その絶好の機会です。
新型コロナ対策を切り口に、日ごろの悩みや心配事も含めて、あらいざらい相談してみてください。ここで、何でも話し合える関係性を築くことは今後の介護生活に、必ず良い結果をもたらします。そして話し合いのときには「このような状況下で、本人の想いを大切にするためには何を優先すべきですか?」という質問をしましょう。これによって、介護関係者に「この家族は我々とひとつのチームになって、介護を共に考えていく想いがある」と、伝えることができます。
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