全4563文字

 「私がマッサージしてあげると母が喜ぶし、私もその顔が見たいんです」
 「新型コロナウイルスの感染が拡大する中で、デイサービスを利用するのは不謹慎ではないですか?」

 どちらも、実際に私が受けた介護相談で出てきた言葉です。

 皆さんは、どういう印象を持たれたでしょう。「気持ち、分かるな」でしょうか。「公益を考えている、立派だ」でしょうか。

 私もそう思います。そして、それでも相談してきた方に「母親の元に帰るべきではない」「デイサービスの利用を控えるべきではない」と申し上げました。

 通常であれば対面で行っている企業での個別の介護相談を、現在はビデオ通話を活用して実施しています。そこで受ける相談は、上記のようなコロナ禍による介護不安が大半を占めるようになりました。数えてみたら3月から4月までで70件以上です。

 どなたも介護が必要な家族のことを心配し、終息の見えない現状に強い不安を抱いていることは言うまでもありません。要支援や要介護の状態にあり、すでに介護サービスを利用されているとしたら、新型コロナ騒ぎの前から、不安な状態があったわけで、それがさらに膨らんでしまうのは当然でしょう。

 実際、利用者への感染防止や人員不足の問題などから、自主的に介護サービスの提供を自粛する介護事業者が増えてきています。また、そういったニュースが一段と不安を強めてしまっていることも否めません。

親の介護への不安は、自分の不安の裏返し

 それは理解した上で、あえて申し上げます。

 「私がマッサージしてあげると母が喜ぶし、その顔が見たいから」
 「新型コロナウイルスの感染が拡大する中で、デイサービスを利用するのは不謹慎」

 という発想は、きつい言い方になりますが、「親のために」という理由を見つけて、破裂寸前の“自分の不安”を解消しようとしているように思えます。見方を変えると、新型コロナの騒動によって、“自分の不安と上手に向き合えていない”ということが浮き彫りになってくるのです。

 もっと分かりやすく言えば、新型コロナによるテレワークや休業は、これまでは“仕事”を言いわけにして「まあ、時間があれば考えよう」と目をそらしていた親の介護に、直面する機会になっているのです。