子供が親の面倒を見たくなることは当然ですし、子供に面倒を見てもらいたい親の気持ちもまた当たり前のものです。それを否定するわけではありません。しかし、だからこそ「親の面倒を見たい」という気持ちは行動に移されやすく、周囲の人も美談と受け止めがちで、誰もそれを止めません。

 出産を契機に親元に帰り、そこで介護が必要な状況に直面し、自分で手を出してしまうことで抜けられなくなり、育児しつつ介護、というダブルケアにはまってしまう。あるいは、新型コロナ対策のためのテレワークで家に長時間居るようになったり、親が心配だ、と実家に行ったりすることで、いきなり「介護」に直面し、自ら親の世話を始めてしまう。

 どちらも「100%の善意」から始まったのに、親にも自分にも家族にも、そして会社にも不幸な流れになっていく。そして、事前に知っていれば確実に避けられる悲劇です。

「親が心配だ」と同僚、部下が言い出したら

 ですので、会社員の皆さん、特に人事・総務関連部門の方にお願いです。「親が心配だから実家に帰って仕事をする」という部下や同僚がいたら、その判断が「介護離職につながる可能性がある」ということを知っておいてください。新型コロナの危機が去っても、親の介護で多くの社員が職場に戻って来られなくなってしまえば、会社にとって大きな二次被害となってしまいます。

 「テレワークで時間の余裕ができたから、介護もできますよ」と本人が言ったとしても、親の元へ行き直接的な援助(介護)をするのではなく、電話などで親が常日ごろ困っていることのヒアリングや、その解決策をプロに相談することに、時間を使うようにアドバイスしてください。もしあなたが今そうお考えならば、これまで通りに企業人として日本経済を支える1人であることが、広い意味では社会を支え、福祉のコストを負担することにつながり、親を支えることになることをぜひ思い出してください。

 そばにいられないことに罪悪感を覚える理由は、繰り返しますがまったくありません。
 むしろ、あなたという貴重な戦力が社会から失われることのほうが大きい(「リカードの比較優位論」ですね)。
 介護は、自分が考えて、あなたよりずっと慣れているスタッフに動いてもらうほうが効率もいいし、介護される人にも、もちろんあなた自身にも好ましいのです。

 そして、今こそ、関わってくれているケアマネジャーさんや介護職の皆さんに「このような状況の中で、頑張って運営を続けてくださって、家族として本当に感謝しています」と伝えてください。よりよい協力体制を築くために、大きな意味があります。

 そういった意味では、今はすべての働く人が親の介護のことを考え直す良い機会なのかもしれません。パニックに陥らず、冷静かつ前向きに日々を過ごして、この苦境を乗り切っていきましょう!

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