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 実家での出産をきっかけとして、育児と介護のダブルケアに陥らないためには、最初の対応が重要です。

 大げさな、と思わず、事前に一度帰省して様子をうかがうことも考えましょう。

 実家に介護が必要な家族がいる、もしくはそういう状況が考えられるようならば、実家を管轄している地域包括支援センターに、電話でもいいので事前に相談しておきましょう(具体的な判断基準や相談の方法は「親にチェックが3つ以上付いたらすぐ『包括』に電話!」を)。

 もし、あなたの妻がそういった状況であるならば、夫が代わりに包括に電話をしてもよいのです。「妻の家族のことだから……」と気が引けるのであれば、密告ではありませんが、センターの職員に相談すれば、相談者が匿名でも対応してもらうことも可能です。

 実は私は、妻の一番近くにいて、話を聞き出すことができる夫にこそ、地域包括支援センターへの相談をしてほしいと思っています。渦中にいる妻よりも、客観的に冷静な判断ができる夫という立場は、介護では重要な存在であるからです。先に例に挙げた男性会社員も、もし、早い段階で地域包括支援センターに相談をしていたら、妻の実家には今ごろプロのサポートが入り、状況は大きく違っていたかもしれません。

 里帰り出産を決めていて、すでに外部のスタッフが入っている場合は、担当のケアマネジャーに事情を伝え、対応策を一緒に考えてもらうのもよいでしょう。

 岡崎さんの例では、難産により緊急に里帰りした際に、父親の介護を担当するケアマネジャーが、緊急で父親のショートステイを手配してくれたそうです。こういった対応をしてもらえたのは、困ったときはプロに相談し、プロの手を借りるという体制づくりが、常日ごろからできていたからでしょう。

お父さんのオムツと息子さんのオムツが並んでいるという、ダブルケアの象徴的な場面(写真:岡崎杏里)

ダブルケアを「美談」にしてはいけない

 相馬教授と山下先生が企業とともに行ったアンケートでは、調査対象(大学生以下の子どもを持つ父親・母親)の5人に1人は「ダブルケアが自分事の問題」と回答するほど、身近な問題として捉えられています。あなたの部下や、あるいは同僚にも、こうしたダブルケア状況にある人がいるかもしれません。

 周囲の方は、「親の世話をしながら、育児もできるなんてすごいね、良かったね」と、うっかり言わないように気をつけてあげてください。ダブルケアを美談として受け止めるのではなく、深刻な事態になるケースがあることを理解して、困っているようであれば、できるだけ外部への相談や、プロの力を借りることを勧めてほしいのです。

 優秀なビジネスパーソンは、すべての負担を1人で抱え込もうとして、限界を超えてまでダブルケアを頑張ってしまいます。それにより、あなたの周りの頼れる同僚や優秀な部下が職場に戻って来られなくなってしまったら、会社としても大きな損失になるはずです。

 「ダブルケアの問題」は、すでに社会問題になりつつあります。外部の助力を得られる可能性に気づかないまま、介護離職をする人も増えていくでしょう。「ダブルケア」状態であっても、周りの理解や助け、早い段階から「介護はプロに頼る」ことで、介護離職は十分防ぐことができます。

 思い当たる方、まずは、SOSを出してください。それはあなたが背負い込むべき負担ではありません。
 SOSを受け取った方は、是非、背中を押してあげてください。