自分の親がマンションで問題を起こしていたら……

 子どもの話が出たところで、今回、相談を受けたHさんとは逆の立場も考えてみましょう。もし、マンションで一人暮らしをしているあなたの親が問題を起こし、住民から苦情が来たら………。

 「親が人様に迷惑をかけている!」という強いプレッシャーがどうしても発生するため、こちらのケースのほうが「家族として自分がなんとかしなくては」と思ってしまう方が多いようです。それは、仕事ができるビジネスパーソンであれば、なおさら……。

 しかし、このケースでも、正解は、まず包括に相談を持ちかけること、です。

 すぐに、親が住んでいる地域を担当する包括に相談をしてください。そして「離れて暮らしている」「仕事をしている」「育児中」など、自分で対応することが難しい事情を詳しく話してください。その状況に合わせた介護体制づくりのアドバイスをしてもらうことができます。

地域包括支援センターは、コミュニティの再生も担う

 最後に、絶対に勘違いしていただきたくないことがあります。包括は、相談をすれば「困りごとを目の前から消してくれる」ような組織では「ない」ということです。

 社会の変化に伴い、家族や地域コミュニティでは支えきれない介護の問題をアシストする組織ですが、これまた連載の冒頭に申し上げた通り、彼らはあなたの介護の「下請け」ではありません。あなたと「対等に組んで」、力を貸してくれる非常にありがたい存在です。

 包括は、超高齢化社会や核家族化が進む現代において、失われつつある地域のコミュニティを再生させる一翼を担い、地域の皆さんとともに、地域のお困りごとに寄り添ってくれる、非常に心強い機関。そのように私は考えています。

 地域と相互に支援し合う関係をつくるために、包括は介護に関する勉強会や講演会などを地域の回覧板や掲示板、インターネットなどを通じて多くの情報を発信しています。ところが、今後、介護問題を抱えることになるであろう、一番関わりを持ちたい40~50代の多忙なビジネスパーソンには、その役割が伝わっていないのが現状です。

 ある小学校では総合的な学習の時間に、福祉をテーマに取り上げ、包括や介護施設の職員を講師に招いていました。そこで、講師となった彼らは「おうちに帰ったらお父さんやお母さんに、『包括』のことや場所を教えてあげてください」と、切実に伝えていました。

 そういう意味では「マンションの同じフロアに気になる高齢者がいる」と包括に相談することも、ご心労は察しますが、大変前向きで意味があることだと思います。包括への小さな働きかけが「住みやすい地域=コミュニティの再生」につながり、将来、自分が年を重ねたときに安心して暮らすことができる社会になっていく。長い道のりですが、歩き始める価値はあるのではないでしょうか。

この記事はシリーズ「介護生活敗戦記」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。