全5352文字
(注:写真は本文に出てくる施設とは関係ありません)

 ライターの岡崎杏里です。前回(「実録・父のために介護施設7カ所を一気に見学」)に続き、私がこの夏に経験した「父の介護施設選び実践編」。今回は、老人ホーム(以下、ホーム)を初めて選ぶ方(私を含めて、ほとんどがそうだと思います)がハマりやすい誤解を、川内さんの“プロの目”を通して解いていきたいと思います。

 川内さんが常々おっしゃっている、「ホームは、“ハードよりソフト”」を念頭に置き、私なりに父のことを思い、7カ所の特別養護老人ホームを見学した結果を前回でご報告させていただきました。

 それでも、新しい建物や設備、ホテルのようなエントランス、立派な食堂、レストランで出されるような食事、さらに「プライバシーが守られた広く清潔な個室」について熱を込めて語るスタッフに「それもありかも!?」と、ハード面に心が揺らいでしまうことがありました。

 なぜでしょうか?
 川内さんいわく……。

 「それは、ホームをホテルと勘違いしているからです!」

 おお、なるほど!

 「ホームは、ホテルでも、病院でもありません」

 では、何なのでしょうか?

 「ホームは、一人で生きることが困難になった方の“生活の場所”です」

 ホームは、ホテルでもなく、病院でもなく、生活する場所。
 これをおまじないのように唱えながら見学するとよいのかもしれません。
 さっそく、自分が「ハマった」過程を振り返ってみると……

●揺らぎポイント1:「プライベート感満点の個室」

 繰り返しになりますが、今回の施設見学で一番心が揺らいだのは「プライバシーが守られた広く清潔な個室」についてです。

 父は元気だったころから、起床したらすぐにスイッチを入れるほど、テレビが大好きです。

 今回、見学した施設の1つに、すべて個室、かつ、部屋にトイレがあり、さらに最初から大型のテレビが設置されているところがありました(この施設以外はどうだったかといいますと、テレビは入居者の希望で持ち込み可、でした)。

 「ここならば、父は自分の好きな番組をお部屋でゆっくり見ていられるのかも…」と心が揺らいだのです。

川内さんの視点

 岡崎さんが、お父様の好きなことを第一に考えた、それはよく分かります。

 お父様がお元気であれば、その施設はベストかもしれません。

 でも、お父様が入所するのは、介護が必要になったからですよね。

 トイレもテレビもある個室の居心地が良過ぎて、入居者がそこに引きこもってしまったら、ある意味一人暮らしと同じです。せっかくホームに入居しているのに、サービスを受けにくい環境になってしまいます。