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 介護シーンのなかで「お風呂」は、実はかなり気を使う場面です。

 事故や体調変化が起きやすい場所だからです。重視すべきはお風呂が檜かどうかよりも、入浴介護の方法とスタッフの人員体制なのです。一方で、食事と同様に施設の入居者の扱い方が露骨に分かる部分でもあります。

 入浴は作業量の多いスタッフに負荷のかかるケアの一つです。そこで、効率を上げようと、部屋からの呼び出し、脱衣、洗い場への誘導、体を洗う、服を着る、部屋への誘導、これらの作業をすべて分業にするところもあります。合理的なのですが、やり過ぎると、服を脱いだ入居者が廊下でズラリ並んで待たされるということになります。

 これでは、生活の中でリラックスができるはずのお風呂の時間が、入居者にとって(実はケアスタッフにとっても)苦役になってしまいます。

 食事と異なり、さすがにお風呂の見学は難しいのですが、入浴介護の方法やいかに入居者が安心安全にリラックスできる時間を提供しているかをヒアリングして確かめる必要があるでしょう。

 お風呂に関して、もう一点お話しさせてください。

 さまざまな事情から“入浴拒否”をされる方がいらっしゃいます。それに対してご家族から「せっかく施設に入ったのに、お風呂に入れてもらえず不潔な姿でかわいそう」と苦言を呈されることがあります。

 ですが、入居者の方の気持ちを無視して無理やり入浴させるよりも、拒否をする理由を見つけ出し、問題を解決して徐々に入浴も含めて施設での暮らしに慣れる工夫をしてくれる粘り強いケアをしてくれる施設かどうかが重要なのです。また、それをきちんと家族が納得できるように説明してくれるかどうかも、家族と施設の信頼関係を構築する上で、大きなポイントとなるでしょう。

揺らぎポイント4:「家に帰りたい」と訴えられたら……。

 最後に、もう一つ、施設選びと直接関係はないかもしれないですが、川内さん、聞いていただいてもいいでしょうか。

 取材で家族の施設入所を選択された方からもよく聞く話で、入所した親が「家に帰りたい」とひたすら訴える。その姿がつらいというものがあります。

 施設入所をした父にもそう言われた場合、自分が心理的に耐えられるかどうか不安なのですが、どう対応したらいいのでしょうか。

川内さんの視点

 「帰宅願望」は家族を施設に入所させる際に入所された方にとっても、家族にとっても大きな問題になります。

 真っ先に差し上げたいアドバイスは「どうか、この大きな問題を家族だけで解決しようとしないでください」です。

 ぜひ、施設のスタッフに相談し、一緒にこの問題に向き合ってみてください。

 大切な家族から、面会の度に「帰りたい」言われると「本当にここに入居させて良かったのだろうか」などと、心が揺らぐ。これは当たり前のことです。あまりにその言葉がつらく、面会に行きたくなくなる方、施設サービスに不信感を抱く方、時に、退去して在宅介護を再開される方もいます。結果として、一番大切にしなければならない、家族の関係性を崩してしまうことにもなりかねません。