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川内さんの視点

 そうですね。入居者にとって食事は大きな楽しみの1つですし、介護する側からはレクリエーションの1つに成り得る、とても大切な時間です。

 レストランで提供されるような、盛り付けもキレイで、こだわりの食材によるおいしそうな食事は、元気な人にとってはとても魅力的に見えます。岡崎さんが心を惹かれるのは当然だと思います。

 しかし、ここでも「ホテルじゃない」の呪文を思い出して下さい。
 ホームはホテルではない。もちろん、レストランでもありませんね。

 そこで暮らし、豪勢な食事が毎日続いたらどうでしょうか?
 そして、生活の場での食事の最大の問題は料理や素材ではないんです。

 例えば、どんなにおいしい食事が提供されていても、食卓に笑顔も会話もなく黙々と栄養補給だけの時間だったとしたら…。

 食事は「食べる」だけの時間ではありません。たとえば、入居者にはできる範囲で盛り付けを手伝ってもらい、そこで会話が弾み、食材で季節を感じる……といった「介護」の時間でもあります。そうなんです。食事は、作るところからレクリエーションの1つとして活用することもできるのです。

 にこやかに会話をしながら和やかな雰囲気の中で食べるならば、内容は同じでも感じるものが違うかもしれません。また、いつまでも通常食が食べられるとも限りませんから、刻み食やミキサー食への対応、またそれらにも盛り付けに工夫がされているか、などに、施設のソフト面の実力を見ることができます。

 メニューや食材の写真に目を奪われず、リアルな食事の時間に見学に行くことをおすすめします。

 岡崎さんによれば、ある施設では「自宅にいるような雰囲気を味わってほしいので、今まで使っていたお茶わんを入居時に持参してください」と言っていたそうです。

 これには、同業者ながら「やるな」と思ってしまいました。

 たいていの施設は共通のプラスチックの食器を使います。食洗機にかけやすく、割れる心配が少なく、事故が減るので大きなメリットがあります。そこをあえて、扱いが大変な瀬戸物が多いであろうご自宅で使っていた食器で対応するというのは、「これまでと同じような環境を少しでも提供したい」という、入居者のことを考えての覚悟が伺えます。かなりソフト面のレベルが高い施設なのかもしれませんね。

揺らぎポイント3:「檜のお風呂」

 元気なころの父はよく温泉旅行に行くほどの風呂好きでした。そのため「自力で浴槽に入ることができる方にはヒノキのお風呂で、週に1回は入浴剤を入れて楽しんでもらっています」という施設にも、魅力を感じたのですが……どうでしょう?

川内さんの視点

 もうツッコミどころはお分かりかもしれませんが、あえて。「旅行先で旅館を選ぶポイント」として考えるならば、お風呂の充実はものすごく魅力的ですね。

 ですが、ホーム選びで重要なのはそこでしょうか?