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 「一人暮らしを満喫できるなら、なにか他に必要なの?」

 と思う方は、やはりホテルとホームを混同しています。

 実話ですが、「せっかく個室のある施設に入所したのに、施設の人が親をリビングに引っ張り出してばかりいる」と、クレームを入れているご家族がいらっしゃいました。

 でも、それは「元気な」ご家族が考える視点であって、ケアが必要なご家族をお預かりする、介護のプロが考える視点とは少し違っているのです。

 施設は介護が必要な方が適切なケアを受け暮らす場所です。すべての人にとってとまではいいませんが、他の人との会話やふれあいは、介護にとって大きな意味があるのです。

 日中、リビングでスタッフや入居者と交流をしていれば、前向きな刺激になるのはもちろん、日中の活動量が増えるので、夜はしっかり眠ることができ、認知症の人に起きやすい昼夜逆転の防止にもつながります。常に人の目があるので急な体調変化にもすぐに気が付くことができます。

 共同の部屋で、そこにテレビがないのであれば、それが「リビングに行こう」という気持ちのきっかけにもなるでしょう。これは「ホテル」を選ぶ目のままではなかなか気づけないポイントです。

 家族には理不尽に思えるようなことでも、「そこでケアを受けて暮らす」というプロの視点を持つと、“個室=ベストな住空間”とは言い難いところもあるのです。部屋に引きこもっている場合でも、スタッフの質と量が充実していれば、こまめに様子を見に行くことができますが、同じ人員数ならば、大部屋のほうがケアはきめ細かくなるのは、物理的に当然です。

 岡崎さんのお父さんは人との交流がお好きということなので、もしかしたら“個室”でないほうが、ケアスタッフや他の入居者さんから刺激を受け、充実した日々を送れるかもしれません。

揺らぎポイント2:「豪華な献立」

 「おいしい食事の提供に力を入れています。面会に来たご家族も、事前予約をしていただければ、一緒に楽しめます」と、献立や食事の写真を見せてくれる施設がありました。

 もともと食道楽で、食事に対して強い執着がある父のことを考えると、その話に私の心は大きく揺らぎました。川内さん、これってどうでしょう?