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「施設の申し込みだけでも」とずっとアドバイスされていたのに

 状況は以上なのですが、実は、そもそも、この夏の出来事に関しては大きな反省があります。

 昨年から、当時のケアマネジャーさんに「とりあえず、申し込みだけでも…」と、「父の施設入所」を打診されていたのです。

 私が実家を出たことで母の負担は確実に増え、両親ともに70歳を超えたので、娘として「そろそろ、施設入所を考えてもいいのではないか」と、ケアマネさんとともに、母と話し合う機会を設けました。ところが、母は「まだ大丈夫」「そのうち考える」と、乗り気ではありませんでした。

 そしてこの夏、「まだ大丈夫」と言い続けていた母が、ついに倒れてしまいました。

 松浦晋也さんの連載、そして川内さんの連載でも散々、「早め早めの対応を…」との忠告があり、あまつさえ自分で記事にまでしていたのに、自分のこととなると、母の言葉を信じて「父の施設入所」を考えることを先延ばしにしていました。

 さらに言えば、20年以上在宅介護を頑張ってきたからこそ、私の中にも、「父を施設に入所させる」ことに迷いがありました。

 正直なところ、自分の親のこととなると、「本当にそれでいいのか?」という“心のハードル”をなかなか越えられないところもあったと思います。

 一方で私は、一人娘です。そして親戚も近くにいないため、母が倒れてしまうとすべての負担が自分にのしかかってくることになります。幼い息子のためにも、一家共倒れだけは防ぎたい。決断の時が迫りつつありました。

 川内さんが連載で指摘されていたように、父の望むことを考慮し、母とじっくり向き合って「父の施設入所について考える」ことが、本当に大事だなと思いつつ、母が倒れたことで、育児と両親の介護で精いっぱい。いきなり“心のハードル”をなぎ倒してでも「父の施設入所」の手続きを進めねばならない状況に陥りました。

 本当に川内さんの言うとおり、自分に、支える家族に心の余裕があるうちに父のことをもっとしっかり考えておくべきでした。

 いっぱいいっぱいになってしまった岡崎家。

 父の主治医は、介護をしている母のあまりの衰弱ぶりに驚いて、介護老人保健施設(※1)への一時入所を計らってくれました。そして、母も介護サービスを受けることになりました。現在、父のことも、母のことも、私が主たる介護者としてすべての手続きを行っています。

 2人分の手続きや対応をすることはかなりの負担になります。どうか、この記事を読まれているみなさんは、私のようなことにならないように、「早め、早めの対応」を忘れないでほしいのです。

※1:「介護老人保健施設」とは主に医療法人が運営する、リハビリや医療ケアなどを必要とする要介護状態の人を受け入れる施設。在宅復帰を前提にした施設で、一定期間で退去しなくてはなりません。

【川内からひとこと】

 まず、「施設選びをすること」と、「本当に入居すること」は別である。ここをしっかり認識することがとても重要です。

 施設選びをするにも体力気力が必要。そういうリソースが残っていない中で最初から「入居」を前提にすると、「とにかく受け入れてもらえるところを探す」という形になってしまうからです。

 在宅介護をしているうちからショートステイを使い、本人に施設暮らしに慣れてもらいながら、いざとなった時に助けてもらえる候補を探す、という流れがおすすめです。絵空事ではなく十分に実行可能なお話ですし、面倒なようで実は最も、介護者にも被介護者にも、ストレスがかからないやり方だと思います。

 また、本当に「最期まで在宅で介護を」と思っているのであれば、家族が疲れてしまったときのリフレッシュや体調不良となった時の緊急避難先は確保しておくべきです。介護は、いつまで続くか分からないのですから、介護者のメンテナンスは最重要課題です。

 そのためにも、要介護3以下の軽度や中程度の介護状態から、ショートステイや老人ホーム選びはスタートしておくべきだと思います。

 そのためには「ホーム選び=必ず入居、ではない」と、しっかり自覚しておくことが重要、というわけです。また、経済的に負担の小さい「特別養護老人ホーム」を選択肢に入れるならば、時には長期の待機が予想されますので、早めの施設選びはやはり欠かせません。