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 「介護相談」の場なので、まずは親の介護の相談から始まるのですが、「同居している方がいるんですか?」とお聞きしてみると、「親と一緒にきょうだいが住んでいるけど、食事は別々」「親に介護が必要な状態なのに興味や関心がまったくない」「自分たち(相談者)にSOSを出してこない」など、「引きこもりのきょうだいの問題」が次々と浮かび上がってくる。決してレアケースではありません。

 「介護が必要な親」と「引きこもっているきょうだい(子ども)」は共依存の関係になることが少なくありません。引きこもりのきょうだいは親のサポートがあって生活できていて、親も引きこもっている子どもを守っていかなくてはという気持ちで頑張り続けます。

 ところが親が倒れると「今度は自分が親を世話するのか?」「収入がないままで、これから生活していくことができるのか?」と、親の介護問題が出現します。

 介護問題は突然(本当はそうではないのですが)発生し、立派な社会人こそショックを受けます。まして、引きこもりの子どもたちに与える衝撃は大きい。社会的支援とつながるすべや発想を持てず、「親以外には頼れる人がいないのに、どうすれば」とパニックになり、親も子どもも状況が悪化していきます。

「8050問題」を解決する光

 さまざまな問題が複雑に絡み合っていて、しかも自ら「助けて」と手を挙げることがほとんどないため、光が当たりにくく解決が難しい「8050問題」。介護の現場で働く自分も強い危機感を抱き、ずっと「宿題」として抱えていました。ところが企業における個別相談の仕事の中で、この「宿題」にふと光明が見えてきたのです。

 松浦さんの連載(単行本『母さん、ごめん。』)で明快に語られているように、介護の問題は、事態の発生、進行にいち早く気づき、外部の支援を仰ぐことがカギ。自力解決にこだわると、事態は確実に悪化します。早く手を打たなかったことのツケは、「8050問題」ではもっと厳しい形で出てきます。子どもが、それまで依存していた親を支えることができないからです。

 しかし、親も子どももお互いに依存しあって「外に助けを求める」という発想がなかなか出てこない。

 ならば、他のきょうだい、身内が動くしかありません。例えば、会社で介護相談に来た際に、「介護が心配な親と、その家に引きこもっているきょうだい」の存在を認めてもらい、彼ら彼女らの支援につながる行動を起こしてもらう。

 恐らくですが、このコラムを読んでくださっている方の中にも、「高齢の親と、引きこもり気味のきょうだいが同居している」という状況の方は少なくないのではないでしょうか。

 仕事ができるビジネスパーソンで、判断力も経済力もある。そんな方々に、家族の危機に気づき、まだ気持ちに余裕があるうちに誰かに相談してほしいのです。