東京都品川区の介護付き有料老人ホームで4月初旬に、介護職員の男(28歳)が入居者の82歳の男性に暴行、殺害した疑いが持たれています(記事公開時点)。

亡くなった男性は、家族に暴行の被害を訴え、施設の防犯カメラには逮捕された男が虐待を行う様子も記録されていました。亡くなった男性を鑑定した医師によると、3階から転落した際に加わる力と同じぐらいの衝撃を受け、複数本の肋骨が折れていたということです。
介護施設でのこうした事件はこれが初めてではありません。
介護事業の一端に関わる者として悲しみと怒りを感じます。亡くなられた方とご家族には深く哀悼の意を表させていただきます。
なぜこんなことが起きてしまうのか。今回の事件については捜査の進展を待つしかありませんが、「同業界の人間」として、推測できる理由を挙げさせていただけば、最大の理由はやはり「人の不足(数も質も)」でしょう。
人手不足は介護業界に限った話ではないですし、効率化、省力化努力の不足、と指摘される部分もあります。一方で、やはりこの業界は、「人の命を(かなりダイレクトに)預かる」という性格上、どうしてもある程度の数の人員は欠かせませんし、スタッフの能力に頼らざるを得ないところがあります。
食事だけでもこんな具合です
スタッフに最も負荷が掛かる「入居者の食事」の場面で説明しましょう。
まず、入居者が暮らす部屋から食事の場所への移動があります。
食堂へおいでください、と声を掛けておしまい、というわけにはいきません。移動時につまずいて転んだりされたら大変ですので、一人ひとりから目が離せません。声を掛けたところで「××を持っていきたい」「眼鏡がない」と、部屋の中で探し物が始まったり、「食事の前にトイレに行きたい」となれば、排せつの介助をするケースもあります。時間はいくらあっても足りないのです。
次に、食事と切り離せないのが投薬のケア。
これは絶対に間違えることが許されません。看護師を中心に配薬していくのですが、これまた「飲んでくださいね」では終わりません。薬を口に入れるところでポロリと落としてしまう方もいます。きちんと一人ずつ、薬を飲み終わるまで見届けなくてはいけません。
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