親にチェックが3つ以上付いたらすぐ「包括」に電話!
02:介護の支援を仰ぐための調べ方、話し方、考え方
川内 潤
他1名
NPO法人「となりのかいご」代表
「お母さん、冷蔵庫の中、賞味期限が過ぎたものだらけだけど……」
「お父さん、駅から家まで帰るのに道に迷ったって本当?」
ちょっとおかしい、いままでこんなことはなかった、という出来事に気がついた。でも、単純な“ど忘れ”かもしれない。そうであってほしい。第一、こんな程度で誰かに相談していいものだろうか……。
あるいは、もっとはっきり「財布がない、あなた盗ったでしょ!」と怒鳴られたり、自宅にいるのに「ウチに帰らなきゃ」と夜中に出かけようとしたり、という状況になっていても、なかなか、自分の家族のトラブルを他人に打ち明け、アドバイスを仰ぐのは気が重いものです。
自分ではなかなか決断ができないものですが
私がセミナーでお会いした方で、「3つ先の駅で道端にしゃがみこんでいたお母さんを保護したと、警察から連絡を受けた」という体験をしても、まだ、ご自身で「介護の支援が必要だ」という気持ちの切り替えができなかった方が、実際にいらっしゃいます。外から見れば状況は明白でも、自分ではわからない。それが普通のことなのです。
だからこそ、私は企業内の介護セミナーや個別相談で繰り返しお伝えしています。ここでも言います。親に異変を感じたら、とにかく「地域包括支援センターに電話をしてみましょう」。
……と言っても、やはり難しいですよね。そもそも「地域包括支援センター(以下、適宜、包括=ほうかつ、と略します)」という名前からして、何のためにあって、誰がやっているか、どういう機能を持っているのかがとてもわかりにくい。カンバンを見た記憶もおそらくないでしょう。「何、それ?」という感じだと思います。
しかし「包括」というキーワードだけでも覚えておけば、いざというときに検索できるかもしれません。まさかのときには思い出してください。この言葉を頼りに、早め早めに行動を起こせば介護は「敗戦」に陥らずに済むのです。
包括は誰がやっている?
地域包括支援センターは、地域の福祉相談(※障がい児、障がい者の方には別の窓口が用意されています)に「無料で」対応してくれる専門家が常駐している、公的機関です。
「そんな便利なものがあったのか?!」と思われる方も多いのではないでしょうか。現役で働く世代からはなかなか馴染みがないかと思います。
次に、どこにあるか。日本全国どこにでもあります。今お使いのインターネットで
「地域包括支援センター(スペース)親が住んでいる住所の●丁目」
までを入力して検索すると、どこにお住まいでもまず間違いなく表示されます。
いますぐ、試しに検索してみよう!
実際に調べてみると「えっ、あそこ“包括”だったの?」と驚くこともあります。ここまで読まれたのも縁、いま、すぐ、試しに自宅、あるいは親御さんの最寄りの地域包括支援センターをインターネットで検索してみませんか。どこにあるのかを知っておくだけでも安心につながります(※地域によっては「あんしんケアセンター」「お年寄りセンター」「ケア24」「地域ケアプラザ」など独自の呼び名にしていることもありますが、「包括支援センター」で検索すればまずひっかかります。それでもうまくいかない場合は、親御さんの住んでいる市区町村の役所のサイトや総合受付に直接問い合わせてください)。
さあ、やってみましょう。あなたの介護の相談窓口を探すために、グーグルの検索窓に、「地域包括支援センター」と入力し(「」は不要です)、介護を考えているご家族が住んでいる地域を入力してください。
さて、ビジネスパーソンの方ならば、無料で活動している「地域包括支援センター」の運営についてご興味をもたれるかもしれません。これは以下の3つのパターンに分けることができます。
- ・社会福祉法人などが行政からの委託を受けて運営しているパターン
- ・民間企業が行政からの委託を受けて運営しているパターン
- ・行政が直接運営している「直営」パターン
一番多いのは社会福祉法人などが行政から委託を受けて運営しているパターンです。老人ホームなどの中にその事務所が併設されていることも少なくありません。
こうしたお話をしても「地域包括支援センターのことはわかったけど、まだ自分にも親にも関係ない」と思われた方もいるかもしれません。
あるいは「それでも、本当に人様の時間を取って、身内の問題を相談していいんだろうか。『その程度で連絡してこないでください』なんて言われたら……」と、不安に感じる方も多いのです。
そんなときは、ぜひこのチェックシートを試してみてください。
不安を解消! チェックシート
>>ダウンロードはこちら
このチェックリストは、拙著『もし明日、親が倒れても仕事を辞めずにすむ方法』にも掲載していますが、青い色の枠に3つ以上チェックが入った場合は、すぐ「地域包括支援センター」に電話相談をしてください。
これは、脅しでもなんでもありません。本当にすぐお電話されることをおすすめします。
なぜなら、このチェックリストは私なりに再編したものではありますが、「介護が必要か否か」を判断するのに、地域包括支援センターの職員が使用しているものとほぼ同じ内容だからです。仮にこれを行わずに電話されたとしても、同じ結果になるのです。
青色の部分にチェックが付いた内容について、地域包括支援センターの職員に相談すれば、余計な時間を掛けずに話をスムーズに進めることができます。
青色の枠に3つ以上チェックが入り、地域包括支援センターへのファーストコンタクトを行う際の手段は、まずは電話で構いません。わざわざ出向くとなると、会社で休みを取る必要が出てきたり、そもそも心理的にもハードルが上がることになって、後回しにしてしまいがちです。お昼休みの10分を利用して「とりあえず電話」をするだけならば、気軽に行うことができると思います。
(なお、親御さんが遠距離にお住まいで、介護をすべきかどうか心配な場合は、実際に本人に会う機会を待たずに記憶でチェックしてください。とにかく、包括に早めにコンタクトを取っておくことが大事です)
電話で地域包括支援センターの職員と話すだけでも、現状が整理でき、今必要なことが見えてきます。そしてなにより、早い段階から地域の情報ネットワーク拠点でもある地域包括支援センターにコンタクトを取っておくことは、今後、親の様子が急変するなど、「これは何かあった」と考えざるを得ないときに、すでに相談先がわかっていて、しかも「事情も知っている人」と繋がることができる。その安心感を得るという意味でも大きな一歩になります。その一歩こそ、あなたの「介護の体制作り」のファーストステップとなるのです。
何度も繰り返して恐縮ですが「まだまだ……」と思っていても、早い段階から「介護対策」をしていくことが「仕事と介護の両立」には非常に重要なポイントとなります。
「これはちょっとダメかも」な担当者に当たってしまったら?
ここまでも決して「建前」ではありませんが、ちょっと「本音」の話もしておきましょう。
ごく稀なケースとして、地域包括支援センターの職員の対応が通り一遍等で冷たく感じることもあります。そんなときはどうするか?
簡単です。「これは駄目だ」と思ったら、そこで諦めず、1回電話を切り、ビジネスで言うところの「上司を出せ!」ではありませんが、「センター長とお話がしたい」と掛け直し、改めて相談をもちかけてみましょう。
職員の立場になってみますと、例えば緊急性の高い事案を優先して「その程度ならば……」などと返答してしまうこともあります。誰かに振ろうにも、センターのみんなが忙しそうにしていて、相談しづらい雰囲気があるかもしれません。
しかし、「緊急性の高い事案に至らないように予防する」ことも、彼らの大切な職務なのです。どんな些細なことでも遠慮なく相談してみましょう。
ただ、その場合「とりあえず、包括では何をしてくれるの?」といった上からの態度では、誰でも対応がしょっぱくなるのは当然です。
ここで前回の「マネジメント介護」という言葉を思い出していただき、ビジネス上のパートナーと一緒に、商売上の課題を整理し解決していくような姿勢を取っていただければと思います。ビジネス上でも経験があるかもしれませんが、上手く頼れば、頼るほど職員が親身になって対応してくれる可能性がグッと上がります。
話しましょう。「なにが壁ですか、どう乗り越えましたか?」
今回の内容、いかがだったでしょうか。え、まだ「包括に連絡するのはしんどい」ですか? そんな方も、すでに連絡・活用された方も、ご自身の包括とのファーストコンタクトのお話や、これから相談しようと思っている方の生の声を、「みんなの介護生活奮戦記」の「[議論]「地域包括支援センター」とのファーストコンタクトについて」にお寄せいただければ幸いです。次回は、実際に包括に相談して、要介護認定や介護サービスの利用まで進む場合のお話をしようと思います。
この記事はシリーズ「介護生活敗戦記」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。
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