あなたはナウシカの腐海(の前段階)に住んでいるのかも

 なぜここまで、40年近く昔のゴキブリの話を延々としてきたのか。

 年老いると、身の回りの片付けがおっくうになる。おっくうになると最初に手入れが放棄されるのは庭だ。庭が荒れるのは、老いの危険信号である。

 次に来るのが部屋の掃除の放棄だ。部屋の場合は掃除を放棄すると、やっかいな侵入者がやってくる。虫である。

 孤独死のまま、遺体が放置されると、腐敗が始まり、蠅が卵を産み付けてウジが湧くというのはよく聞く話だろう。が、実際にはそれよりもずっと以前に、別の虫がやってくる。その代表がゴキブリである。

 今、虫と書いたが、やってくるのは三体節・六本脚の昆虫だけではない。掃除を怠れば自分の体から剥落した皮膚やフケなどを目当てに、ダニもやってくる。ダニが繁殖すれば、ダニを食べる別のダニや昆虫もやってくる。掃除なしで住み続ける屋内は、自然の摂理に従って「風の谷のナウシカ」(宮崎駿監督:1984年)が描くところの腐海のような生態系が支配する場所となるのである。

 歳を取っていなくても、「面倒臭い」と部屋の掃除を怠っているあなた。あなたは実は腐海に住んでいるのだ。そして、もっと片付けが面倒になる老年期に入った時、あなたの部屋がどうなるか――今から少しでも想像力を働かせておいたほうがいい。老いは一面でゴキブリのような虫との戦いであり、認知症の発症は家庭内対虫戦争における決定的敗北への第一歩なのである。

ゴキブリを周囲に撒くことなく生活できる技術を

 さて、ここで、2018年夏の次々とゴキブリが現れる我が家に話を戻そう。なぜ、いままでは現れなかったゴキブリが、この家に出現するようになったのか。

 実は、我が家の周囲も高齢化が進み、老夫婦だけというような家が目立つようになっている。もしかして、そんな家で清掃や生ゴミの片付けが不十分ということが起きて、ゴキブリが繁殖しているとしたら、そして時折一念発起した住人が片付けを行うと、生活の場を失ったゴキブリが新天地を求めて散っていくならば――我が家の各所でまんべんなく、ゴキブリが出現した理由を説明できる。

 もちろんこれが真実だとは断言できない。なによりもそんな慎ましく生活している老夫婦の世帯に「お宅ではゴキブリって出ますか。どんな感じですか」などと失礼な質問をできるはずもない。

 だが、この問題は放置してよいものではないだろう。自分が老いた時、ひょっとすると周囲のご家庭にゴキブリを振りまく加害者となってしまう可能性があるわけだから。歳を取っても、体が衰えても、家を清潔に保つ技術的手段の開発は、今や喫緊の課題といえるのではなかろうか。

Raiseの「“みんなの”介護生活奮戦記」では、介護に関連する悩み、不安などを引き続き募集しております。川内さんも参戦してくださいますので、今回の記事のご感想も合わせ、みなさんの声をお聞かせください。後に続くたくさんの方々に、貴重な体験や方法論を共有し、役立てていきましょう。現在、「[議論]介護の不安、悩みを吐き出してみませんか?」で議論しています。(担当編集Y)

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