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 現場からマネジメントへ。

 その発想の切り替えができれば、職場での有能さは一転して大きな武器になります。あなたがビジネスパーソンとして、これまでに培ってきたビジネススキルを介護に存分に生かすことができるのです。

 「介護に、ビジネスのスキル?」と疑問を持たれる方が多いと思いますが、どういうことなのか、仕事の現場と照らし合わせながら見ていきましょう。

 ビジネスシーンにおいて課題が生じたときには、解決までに次のようなプロセスをたどるのではないでしょうか。

  • 1)業務の中で起きている課題を分析する
  • 2)分析に基づき、課題をどうやってクリアするか考える
  • 3)自分ひとりでは難しい場合、チームでどうやってその課題に取り組むか考える
  • 4)方針が決まったら、見通しを立てて、チーム内でそれぞれの役割分担を決め、実行する
  • 5)課題解決

 これを「介護」に置き換えてみましょう。
 課題を「親が介護サービスを受けたがらない」とします。

  • 1)なぜ、介護サービスを受けたくないのか、親の介護サービスに関わる人たちと話し合いながら分析する
  • 2)「他人に介護されることが嫌だ」ということが課題ではないかと仮説を立てた
  • 3)親の介護サービスに関わる人たちに相談し、徐々に家族以外の人に介護されることに慣れてもらうように、「時間をかけて介護サービスの量を増やしていく」というアイデアが生まれた
  • 4)親の介護サービスに関わる人たちが話し合い、親がサービスを提供する前のコミュニケーションに重点を置き、「まず、顔なじみの関係を作ること」を最初の目標とした
  • 5)数回の自宅訪問により共通の趣味を見つけることができ、スタッフとの間に親しみが生まれ、さまざまな介護サービスも受け入れるようになった

プロの力を活用するマネージャーとして

 仕事ができる方は、決して一方的な押し付けで問題を解決しようとは図らないはずです。感情的にもつれてしまうと、ロジックでは解決できないやっかいごとになると知っているからです。それでも、自分の親となると、嫌がっても無理やり介護サービスを利用させて、衝突を生み、お互い疲弊する事例は後を絶ちません。

 ビジネスの現場にいる場合、自分で解決策が思いつかなければ、課題を把握・分析した上で、知恵やスキルがあるスタッフに相談して、解決策を立てていくはずです。

 直接、手を動かすことだけが介護ではありません。ビジネススキルを生かし、介護サービスを上手に調整したり、スタッフのやる気を引き出すマネジメントを行うことも、すごく立派な介護だと私は思っています。

 いまの日本の介護の問題は、たとえばこのような「親が介護施設に行きたがらない、家にヘルパーさんが来るのを嫌がる」といった問題の解決も、「自分自身で親を説得しないと」とつい思い込んでしまうところに露呈しています。介護は事業であり、プロジェクト。プロジェクトマネージャーが一から十までやるのではなく、プロの力をあらゆるところで活用し、被介護者と自分のストレスを軽減することを第一に思いつくように、みんなの認識を改めていかねばなりません。

 任せられるところはプロに任せて、親の介護に関わる人たちを「家族を介護していくひとつのプロジェクトチーム」と捉え、マネジメントをしていけば、仕事と介護の両立は無理なく可能になります。次回以降、個別の事例で具体的にご一緒に考えていきましょう。

Raiseの「“みんなの”介護生活奮戦記」では、介護に関連する悩み、不安などを引き続き募集しております。川内さんも参戦してくださいますので、今回の記事のご感想も合わせ、みなさんの声をお聞かせください。後に続くたくさんの方々に、貴重な体験や方法論を共有し、役立てていきましょう。現在、「[議論]介護の不安、悩みを吐き出してみませんか?」で議論しています。(担当編集Y)