父親の様子がおかしいことに気がついた佐藤悦子さん。ためらいを乗り越えて地域包括支援センター(以下包括)に相談し、調査を依頼しました。しかし、バリバリのビジネス戦士だった昭和一ケタ生まれのお父様は、自らが介護を受けるべき状態かもしれないということを認める気配は、まったくなくて……。父が、母が、そしていずれ自らが迎えるかもしれない「介護」、その入り口の体験を、佐藤さんが率直に語ります。(編集担当Y)
[議論]介護の不安、悩みを吐き出してみませんか?

佐藤 悦子(さとう・えつこ)
(前回から読む)
いよいよ、調査員がご自宅に来ることになったわけですね。
佐藤:でも、うちの父はものすごくプライドが高いので、不安になりまして「調査の方にも『何しに来たの』と言いかねないし、逆に、自分の失敗とかは絶対に言わないと思います」と先にご相談したんですね。そうしたら、「そういう方はよくいらっしゃいます。そのときは無理に(本当は失敗しているじゃないかと)否定しなくていいです。佐藤(悦子)さんとお2人で話す時間を設けるように調査員にも言っておきますから」と、言ってくださって。
松浦:よく分かります。実際の調査はどうなりましたか。
佐藤:ぱりっとしたポロシャツとかを着て、クリーニングから戻ったばかりのようなズボンをはいて、ロレックスとかしていて、すごかったです。
え、調査員がですか。
佐藤:違います、父が(笑)。
松浦:お父様が、ロレックスをはめて出てきた。
「今日も髙島屋の特別食堂に行ってきたんだよ」
佐藤:「何にしに来たの、こんな元気なのに。今日も髙島屋の特別食堂に行ってきて、ウナギを食べてきたんだよ」と(笑)。
ああ、そこで見栄を張る気持ち、男子として痛いほど分かります。
佐藤:「いつもそうやって出掛けていてねえ」と言うわけです。調査の方が「お買い物とかはどうしてらっしゃるんですか」と言ったら、「すぐそこにセブン-イレブンがあるでしょう、便利なのでよく行っていて」。「お金の管理とかはどうされていますか」と聞かれたら「自分ですよ、ほかに誰がするの」。「お風呂とかは……」「毎日自分で入ってるよ」と。
松浦:実際にはそうではないんですね。
佐藤:お金の管理は自分でやっていましたが、日常的な買い物は私がやっていましたし、お風呂もとても毎日とは。
うちの母も、調査員の前ではものすごくそんな感じでした。
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