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 何の準備もせずに、親の介護に直面するとどうなるか――。科学技術ジャーナリストの松浦晋也さんが実際に体験した「敗戦記」を連載してきた本コーナーは、日経ビジネス電子版の創刊に連動して、「働く人と介護」をテーマにより幅広く、深い内容でお送りいたします。メイン筆者として松浦さんにもこれまで以上に筆を振るっていただき、随時、新しい専門家や書き手の方を加えていく所存です。

 第一弾は、クリエイティブディレクターの佐藤可士和さんの奥様にして「SAMURAI」のマネージャーを務める、佐藤悦子さんとの対談です。

 今回の再起動にあたり、日経ビジネス電子版の「Raise」と呼ぶ議論の場で「“みんなの”介護生活奮戦記」というシリーズを始めました。

 日経ビジネスオンラインの本連載のコメント欄には、読者の方々から、思わず目頭が熱くなるようなご体験や、ご感想、そしてご質問をたくさん頂戴しました。そこで、Raiseの機能を生かして、皆様にぜひ、このテーマをめぐる議論に参加したり、ご自身の体験談を語っていただきたい、と思っております。[議論]介護の不安、悩みを吐き出してみませんか?

 働く人も、介護される人も少しでも幸せになれるように、微力を尽くしてコラムとRaiseの議論を運営してまいります。

 これまで以上のご支援を、どうぞよろしくお願い申し上げます。

(担当編集:Y)

佐藤悦子さん(左)、松浦信也氏(右) 写真:大槻純一、以下同

佐藤悦子さん(以下佐藤):はじめまして。私は自分の父親の介護を始めたばかりなのですが、松浦さんの「介護生活敗戦記」の連載と単行本(『母さん、ごめん。』)、ものすごく役に立っています。

松浦晋也氏(以下松浦):それはとても嬉しいです。しかし、こんな綺麗に整ったオフィスにお邪魔したのは初めてかもしれません。なんだか、そぐわなくて申し訳ないような(笑)。

佐藤:いえいえ、とんでもない。

佐藤 悦子
(さとう・えつこ) 早稲田大学教育学部卒業後、株式会社博報堂を経て、外資系化粧品ブランド(クラランス、ゲラン)のAD/PRマネージャーに。2001年よりクリエイティブディレクター佐藤可士和氏のオフィス「SAMURAI」のマネージャーとして、幅広い企業のブランディングプロジェクトに多数携わる。一児の母。『子どもに体験させたい20のこと』(筑摩書房)などの著書をもつ。

でも、「日経ビジネスオンライン(以下NBO)」で、航空宇宙の専門家である松浦さんに、介護敗戦記の連載をしていただくというのも、ある意味、そぐわなかったもしれませんね。

佐藤:確かに、ビジネス系のメディアにしては意外な内容ではありましたが、むしろ、NBOにこの連載があったことは、たくさんの方にとって、とても良かったのではと思います。

 実は、私も父について「あれ?」と思ったことがいくつかあったのですが、介護関係の資料に当たろう、というマインドにはならなかったのですね。

松浦:なるほど。

佐藤:単なる加齢による一時的なものだと思っていたのです。ですが、まったく予期せず松浦さんの連載に触れて、「これはもしかして、認知症の初期症状なのかもしれない」と気づくことができました。NBOに記事がなかったら分からなかったと思います。

 松浦さんが書いていらっしゃったから「地域包括支援センター(以下包括)」も知りましたし、強く背中を押されたから、よし、包括に電話してみようか、という気持ちになれました。

松浦さん、連載してよかったですね。

松浦:とりあえず、包括に行く心理的な敷居を下げるだけのことはできたんですね。

佐藤:はい、すごくそういう効果はありました。介護関係のところにコンタクトする、というのは、どうお話ししていいのか、今の状況で連絡していいのか、とても分かりにくいですし、ご迷惑をかけないかなと萎縮してしまいますよね。