船を造り、修繕もする

F:ところで造船会社は船を造るだけでなく、修繕も行う。これも興味深い。新造と修繕。これはどちらがもうかるのですか?

クレーンの土台部分。たくさんの車輪で重量を分散している。何もかもが桁外れにデカい。
クレーンの土台部分。たくさんの車輪で重量を分散している。何もかもが桁外れにデカい。

:絶対額で言ったら、それはもちろん新造です。修繕とは売り上げの規模が全然違いますので。ただ、新造は受注の時期によって価格が大きく変動します。もうからないときは、あまりもうからない。利益の額でいうと、やっぱり新造のほうが大きいですが、「利益率」という言う方をすると修繕のほうが良いですね。

F:常石で造った船は、必ず常石でメンテするのですか?

:いえ。そうとは限りません。ウチを出たきり一生戻ってこない船もありますし、他社で造ったものでも、ずっとウチで見ている(修繕している)ものもあります。ケース・バイ・ケースです。

F:せっかく常石さんに造ってもらったけど、「他にもっと安くやってくれる会社を見つけたから、そっちでやるわ、ゴメンね」というケースもあると。

:はい。そして当然その逆もある。ウチは逆のほうが多いです。他社さんで造って、ウチで修繕するほうが断然多い。

F:なにか縛りや協定を設けることはできないのですか? 「常石造船製の船は常石に見せよう」キャンペーンとか(笑)。

:今のところないですね。今後は、常石で修繕するメリットの向上に取り組んでいきます。

 少しだけ歴史の話をしますと、1903年に神原汽船という船会社を創業して、それから14年後に造船を始めました。1992年にフィリピンで会社を設立し、2001年に中国に会社を設立。2003年には中国に工場をつくり始めました。

F:中国には単独で造船会社をつくれませんよね。やはり中国の造船会社と組んでつくったわけですか?

:いえ。ウチは独資です。

F:独立資本。いったいどのような裏技を……。みんなそれで苦労しているのに。

:裏技でもなんでもなく、タイミングです。短い期間ですが、「単独でもいいよ」という時期があったんです。たまたまそのタイミングに設立できたんですね。ヤマグチさんの言う通り、現在は、中国で独資で会社をつくることはできません。

中国の舟山工場全景。(写真:常石造船)
中国の舟山工場全景。(写真:常石造船)

:2017年に造船100周年。翌年の18年に、三井E&S造船さんの商船事業分野と業務提携を行いました。

 三井E&S造船は、1917年に三井物産の造船部門として創業した会社で、戦前戦中は艦艇の建造に関わっていた。商船部門は常石に、艦艇部門は三菱重工に譲渡された。ちなみにE&SはEngineering & Shipbuildingの頭文字を取ったものである。現在常石造船は、三井E&S造船の株式の49%を保有している。今年10月には出資比率を66%に引き上げる予定だ。

:今ここで働いている工員さんの数は全部で855人。「本工」と呼ばれる常石の社員が174人。協力会社の社員さんが681人です。あ、時間がありませんね。後は工場で実際にモノを見ながらお話ししましょう。そのほうが話が早い。

 さあさあ、いよいよ工場見学だ。

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この記事はシリーズ「フェルディナント・ヤマグチの走りながら考える」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。