常石造船 代表取締役社長執行役員 奥村幸生氏(以下、奥):私の実家の献立もお話ししたし、商船大学のキツい練習航海の話もした(笑)。

 それではいよいよ今回お越しいただいた本来の目的である、当社の工場を見ていただきましょう。
 工場の案内はここにいる佐藤がいたします。

常石造船 造船計画部 部長 佐藤治氏(以下、佐):佐藤でございます。よろしくお願いします。

 時間が限られていますので手短に事前の説明をします。
 造船工場には2つの目的があります。新造と修繕です。それぞれエリアが分かれていて、ラインを全て回ると、全長で4kmほどの長さになります。真ん中にあるのが船台です。今、紫色の船を建造中で、これは実際に近くに行ってご覧いただけます。

 船は船台でペタペタと鉄板を貼っていくのではなく、大きなブロックを造り、それを組み合わせていきます。これをブロック工法といいます。1つのブロックはおよそ100t前後。鉄板を切断し、塗装し、部品に組み上げて、それをこちらの……。

常石造船の常石工場。全長で4kmほどある。他に、中国・舟山と、フィリピン・セブにも工場がある。(写真:常石造船)
常石造船の常石工場。全長で4kmほどある。他に、中国・舟山と、フィリピン・セブにも工場がある。(写真:常石造船)

フェルディナント・ヤマグチ(以下、F):あの……あの。ちょっといいですか。100t? 1つのブロックが100tですか。

船は100tのブロックを組み合わせて造る

:はい。1つのブロックの重さが100tです。居住区などの大きなブロックは400tくらいになります。それでそのブロックを組み合わせるのが「ビルディングドック」。ブロックそのものを造るところを「内業工場」と呼んでいます。最初に見ていただくのが……。

F:あの、あのですね……。「100tです」とサラッと軽くおっしゃいますが、そんなに大きく重いブロックを、どうやって持ち上げるのですか。100tと言ったら何しろ100tですよね。

:ああ。クレーンです。常石には搭載用のクレーンが3台あって、それぞれが最大400t吊(つ)れる能力があるんです。

F:1台で400t。ひぃぃぃ。それじゃ居住区を持ち上げるときは、クレーンの最大吊り上げ能力の限界ギリギリまで使ってやるわけですね。

:いや、そういうときは2台のクレーンを使ってやりますね。

F:なるほど。400t+400tで合計800t。倍の余裕を見て作業するわけですね。

:最大吊り上げ能力は確かに400t+400tで800tになりますが、クレーンはブーム(クレーンのさおの部分)の傾斜の角度や作業半径によって、定格荷重が変わります。最大を出せるのは、ブームを一番“立てた”、作業半径が狭い状態。ブームを寝かせていくと、作業半径が広がっていき、定格荷重の値はだんだん下がっていきます、一番ブームを寝かせた状態になると、1台で最大50tくらいまで落ちてしまいます。

これが最大400tの吊り上げ能力を誇るクレーンだ。ちょうど2台のクレーンで400tの居住区部分を取り付けているタイミングだった。
これが最大400tの吊り上げ能力を誇るクレーンだ。ちょうど2台のクレーンで400tの居住区部分を取り付けているタイミングだった。

F:なるほど。クレーンは腕を横に伸ばすと重いものが持ち上げられなくなる。それは感覚的に分かります。

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