マツダの“これから”を担うラージ商品群。
その嚆矢(こうし)となるのが今回試乗したCX-60である。
「群」というからには複数の車種がなければいけない。
マツダは“これから”グローバル市場に、このCX-60を皮切りに、CX-70、CX-80、CX-90、と計4種類の大型SUV(多目的スポーツ車)を矢継ぎ早に導入していく予定である。日本で発売されるのは2列シートのCX-60と3列シートのCX-80のみ。CX-70とCX-90は海外専用モデルである。
これらラージ商品群のクルマに共通するのは、エンジンが縦置きでFR(後輪駆動)レイアウトであるということだ。
現在のマツダは“ほぼ”FF(前輪駆動)の会社であり、FRレイアウトでエンジンを縦に置くのは純粋なスポーツカーであるロードスターだけだ。
SUVに「エンジン縦置き・FR」を導入する狙いは何か。
このレイアウトにすると何がどうなるのか。
試乗のインストラクションを務めてくださるのは、マツダの足回りセッティングを担う、ご存じムッシー虫谷氏。試乗の会場として指定されたのは、マツダの三次自動車試験場である。
マツダ 車両開発本部 操安性能開発部 第2車両運動機能開発グループ兼総合制御システム開発本部 上席エンジニア 虫谷泰典さん(以下、虫):おはようございます。朝早くからご苦労さま。ご無沙汰して……でもないか(笑)。少し前にダイワカーズラリーでご一緒しましたものね。
虫谷氏とは、先月開催されたハイエースのカスタム専門店「ダイワカーズ」が主催するラリーに一緒に出場したばかりである。

フェルディナント・ヤマグチ(以下、F):その節は大変お世話になりました。楽しかったですね。自分で言うのもナンですが、テージャスランチで走ったときよりは、少しはマシになっていたでしょう?
虫:いやもう目を見張るほどの上達でした。短期間でよくあれだけ乗れるようになりましたね。今回の試乗では、バイクに乗りながらお話しした「挙動」の話が出てきますから、楽しみにしていてください。
大型SUVとバイクの挙動に、いったいどのような共通点があるのだろう。
いきなりの虫谷節炸裂(さくれつ)である。
テストコースの中に設(しつら)えられた待機所でクルマとコースの説明を受ける。
全長4.3km。最大45°のバンク角が付いた高速周回路、ヨーロッパの荒れたアスファルト路を忠実に再現した操舵(そうだ)路などを完全貸し切りにして走らせてくださるという。何という好機。じっくりとCX-60を味わわせていただこう。
用意された試乗車は欧州仕様の左ハンドル。2.5L直4自然吸気ガソリンエンジンと電動モーターを組み合わせたプラグインハイブリッドシステム「e-SKYACTIV PHEV」搭載車である。システム最高出力は実に327ps。最大トルクは500N・mと強大なものである。
虫:この三次試験場には、本社から毎日100人から150人を超える社員が来てさまざまな実験をしています。今日はフェルさんのために2時間コースを借り切っているんです。2時間実験を止めるって、本当にエラいことなんですよ。みんなのスケジュールがガタガタになりますからね。その分たっぷりとFRを楽しんでいってください。
ここで「心して試乗しろ」とか「クルマを礼賛する記事を書け」とか言わないのがいかにもムッシー虫谷氏だ。彼はハッキリと「FRを楽しんでくれ」と言った。了解です。存分に楽しませていただきます。
虫:最初にCX-8に乗って操舵路を走ります。FF車の挙動を覚えておいてください。30km/hの低速走行です。ここでコーナーに入る。ステアリングを切る。コーナーの途中でアクセルを踏み込みます。どうですか。アウト側に膨らんでいくでしょう。
コーナーの途中で加速するのだから、当然クルマは外に向かって走ろうとする。
虫谷氏はそれを「膨らむ」と表現している。

虫:コーナーの途中でアクセルを踏む。当然アウトに膨らむ。このままだと外に飛び出しちゃう。飛び出しちゃ困るから、より多くハンドルを切る。当て舵(かじ)ですね。これがアンダーステアの状態です。自分がイメージしたのと違うカーブだからハンドルを切り増ししなければならない。これが度重なるとストレスになり、疲労にもつながります。では戻ってCX-60に乗り換えましょう。
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3/14、4/5ウェビナー開催 「中国、技術覇権の行方」(全2回シリーズ)

米中対立が深刻化する一方で、中国は先端技術の獲得にあくなき執念を燃やしています。日経ビジネスLIVEでは中国のEVと半導体の動向を深掘りするため、2人の専門家を講師に招いたウェビナーシリーズ「中国、技術覇権の行方」(全2回)を開催します。
3月14日(火)19時からの第1回のテーマは、「特許分析であぶり出す中国EV勢の脅威」です。知財ランドスケープCEOの山内明氏が登壇し、「特許分析であぶり出す中国EV勢の脅威」をテーマに講演いただきます。
4月5日(水)19時からの第2回のテーマは、「深刻化する米中半導体対立、日本企業へのインパクト」です。講師は英調査会社英オムディア(インフォーマインテリジェンス)でシニアコンサルティングディレクターを務める南川明氏です。
各ウェビナーでは視聴者の皆様からの質問をお受けし、モデレーターも交えて議論を深めていきます。ぜひ、ご参加ください。
■開催日:3月14日(火)19:00~20:00(予定)
■テーマ:「特許分析であぶり出す中国EV勢の脅威」
■講師:知財ランドスケープCEO 山内明氏
■モデレーター:日経ビジネス記者 薬文江
■第2回開催日:4月5日(水)19:00~20:00(予定)
■テーマ:「深刻化する米中半導体対立、日本企業へのインパクト」
■講師:英オムディア(インフォーマインテリジェンス)、シニアコンサルティングディレクター 南川明氏
■モデレーター:日経ビジネス上海支局長 佐伯真也
■会場:Zoomを使ったオンラインセミナー(原則ライブ配信)
■主催:日経ビジネス
■受講料:日経ビジネス電子版の有料会員のみ無料となります(いずれも事前登録制、先着順)。視聴希望でまだ有料会員でない方は、会員登録をした上で、参加をお申し込みください(月額2500円、初月無料)
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