エンジンマウントの調整は最高に難しい

 新型レガシィ アウトバックの開発責任者である村田さんは、長年SUBARU(以下、スバル)の足回りの開発を担当されてきた「足回りのプロ」である。そして村田さんへのインタビューの“助っ人”として同席されている開発の番頭役小野寺さんは、長らく車両の実験を担当されてきた、やはり足回りに関して特別な感覚をお持ちのプロである。

SUBARU 商品企画本部 プロジェクトゼネラルマネージャー 村田誠氏(右)、同 商品企画本部 主査 小野寺圭氏(左)
SUBARU 商品企画本部 プロジェクトゼネラルマネージャー 村田誠氏(右)、同 商品企画本部 主査 小野寺圭氏(左)

 インタビュー中、エンジンマウントに話が及ぶと、お2人は俄然目の色を変え、足回りについて滔々(とうとう)と語り始めた。

SUBARU 商品企画本部 主査 小野寺圭氏(以下、小):エンジンマウントってすごく難しい。例えばお客様が信号待ちなどでアイドリング状態で止まっているとします。止まっていてもエンジンは動いているので、一定の周波数で振動が発生する。信号が青に変わり走り出すと、今度はエンジンが高回転で回るので、また違う周波数が発生する。同じエンジン、同じクルマでも条件は刻々と変わっていき、それがお客様にブルブルと伝わる。さらには路面からの入力によってエンジンが動く周波数帯もある。路面から受ける振動。エンジン自体が発生する振動。クルマにはさまざまな振動がある。

 一方でエンジンも支えなくちゃいけない。耐久性もなくちゃいけない。マウントを軟らかくすれば振動は伝わってこなくなるから、一見静かで乗り心地が良いクルマになります。でもそうするとコーナリングや加減速時に慣性でエンジンが暴れてしまうから操安性に影響が出てしまう。操安の観点からすればエンジンは動かさずに、なるべくガッチリ固定したい。つまり硬くしたい。でも硬くするとエンジン音や振動がダイレクトに伝わってきてしまう、ごろごろごろごろって。それじゃ我々はどうすればいいのか。どこをどう調整すればお客様に快適に乗ってもらえるのか。ここは大いに悩む部分です。

フェルディナント・ヤマグチ(以下、F):硬くすればうるさいクルマ、揺れるクルマになってしまう。オトシン(音と振動)というヤツですね。

:まさにオトシンです。マウントの調整は最高に難しいんです。先ほどちょっとお話ししましたが、エンジンマウントのゴムの中には共振を防ぐために液体が封入されています。エチレングリコールと言うんですけど。

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