どんなにムチャ飛ばししてもクルマが何とかしてくれる、極めて懐の深い走りを実現した日産ノート オーラ。前回で伺った通り、その走りの秘密は機械式よりも断然制御がしやすいモーター駆動にある。前モデルではオーラのベース車両となるノートに純エンジン車があったが、新しいノート一家にはそれがない。全てのクルマに“エンジンで発電し、モーターで走る”方式のシリーズハイブリッドが採用されている。

前回記事・オーラの4駆はなぜ速い

 どうしてパワートレインに普通のガソリン車がないのか。今回はその辺りからお話を伺おう。

フェルディナント・ヤマグチ(以下、F):オーラを含む新しいノートには、ICEの駆動力によって走るクルマ、純エンジン車の設定がありません。全てのクルマがシリーズハイブリッドです。これはどうしてでしょう。モーター駆動の素晴らしさは身をもって体験したので、その良さは十分に理解できますが、それにしてもエンジン車の併売ナシというのは、相当に思い切った判断だと思うのですが。

渡邊明規雄・日産自動車 第一製品開発本部第一製品開発部 第二プロジェクト統括グループ 車両開発主管(以下、渡):第1の理由は、前のモデルのノートで電動車の実績があったからです。前モデルは最初にICEを出して、途中からe-POWERを出したのですが、出した以降は実に7割強ものお客様がe-POWERを選ばれた。その販売状況を見て、電動が十分に主力商品として成り立つな、お客様に受け入れられているな、という判断をしました。

F:なんと! 電動が7割も! でも残りの3割のお客さんも、数字としては大きいですよね。何しろ数が出るクルマですから。

価格競争から切り離しました

:そこが第2の理由です。今言われた3割。その3割弱を取りに行こうと思うと、どうしてもそちらは価格競争になってしまう。ハイブリッドの市場で堂々と戦っていくためには、下に引きずられたくなかったんです。価格競争の下のほうの戦いから切り離したかった。

 特にフリート(商用・社用のまとめ買い)は本当に価格の世界です。そちらに合わせると、クルマの造り方そのものが、どうしても価格に引きずられてしまうことになる。ベースの価格を抑えざるを得なくなる。すごく安いクルマを造らなくちゃいけなくなってしまう。

F:すると、まとめ買いしてくれるフリート販売は諦めた。その市場は捨てて個人に特化した、ということですか。

:はい。ある意味ICEで戦うフリートの層は捨てた、ということです。

「ハイブリッドの市場で堂々と戦っていくために、価格競争から切り離したかったのです」(渡邊さん)
「ハイブリッドの市場で堂々と戦っていくために、価格競争から切り離したかったのです」(渡邊さん)

F:売れ行きのほうはどうですか。そこまで思い切った戦略を取られて。

:おかげさまで好調です。ただ、半導体をはじめとする資材の不足で、思うようにクルマが造れません。せっかく注文をいただいても、納車に時間がかかってしまっているのが現状です。

F:半導体。私の本業で申し訳ないのですが当分はダメです。少なくとも年内はまったく供給が追いつきません。

 半導体不足が叫ばれて久しいが、一方で去年はおよそ30兆円近くの設備投資が世界中で実施されている。1年間で30兆円。30近い工場が着工しているのだ。これらが立ち上がり、一斉にラインが稼働したら、いったいどのような需給関係になるのだろう。ここ十数年聞こえてこなかった「シリコンサイクル」なる言葉が復活するのだろうか。

F:コストの話をもう少し聞かせてください。e-POWERは高いのですか? やっぱり造るのにお金が掛かるのですか?

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