インタビューは小田急線愛甲石田駅からクルマで10分ほどの場所にある技術開発拠点、「日産テクニカルセンター」、通称NTCで行われた。日産のエンジニアの方にお話を伺う際は、大抵この場所を指定される。

 NTCが開所したのは40年以上も前の1981年で、鶴見と荻窪に分散していた開発拠点を、これでは効率が悪かろうと1カ所に集約したものだ。

 30周年に当たる2011年は東日本大震災で式典どころの騒ぎではなかったので、1年遅れの翌12年に「テクニカルセンター30周年記念式典」が開催された。40周年に当たる2021年はご存じの通り新型コロナ禍で、やはりそれどころではなく、いまだに式典的なことは行われていない。10年の節目ごとに大きな災禍が起きてしまうきらいがあるようだ。2031年に無事に50周年式典が行われるのだろうか。ちなみに11年当時の日産の会長兼CEO(最高経営責任者)はカルロス・ゴーン氏であった。

 今回お話を伺うのは、ノートの開発責任者である渡邊さんである。

日産自動車 第一製品開発本部第一製品開発部 第二プロジェクト統括グループ 車両開発主管 渡邊明規雄さん
日産自動車 第一製品開発本部第一製品開発部 第二プロジェクト統括グループ 車両開発主管 渡邊明規雄さん

フェルディナント・ヤマグチ(以下、F):初めまして。フェルディナント・ヤマグチと申します。今日はよろしくお願いします。

渡邊明規雄・日産自動車 車両開発主管(以下、渡):こちらこそ、よろしくお願いします。

F:オーラの4輪駆動にたっぷり試乗させていただきました。奥志賀と尾瀬岩鞍にスキーに行き、思う存分雪道を走り込みました。いや、素晴らしい出来でした。本当にすごかった。オーラは内装やデザインばかりが取り上げられていますが、とにかく走りが素晴らしい。

優れたオーラの雪上性能
優れたオーラの雪上性能

:ありがとうございます。走りを褒めていただけるのはエンジニアとしてとても嬉しいです。

F:カチカチに凍った早朝の雪道、陽が当たってぐちゃぐちゃに溶けた昼過ぎの道。そんな条件で相当ムチャな飛ばし方をしても、クルマが何とか収めてくれる。どうしてあそこまで雪上性能に優れているのでしょう。秘訣を教えてください。

:1番の理由はオーラが電動であるからです。モーターってすごいんです。クルマを造る側からすれば、反応が「遅れない」というのはやっぱりすごいことで。応答性の速さ、制御のしやすさ、そして制御の自由度の高さ。これらが機械式とは段違いなんです。

機械式に比べると電動はうんと設計しやすい

F:機械式とは反応が違う。

:違いますね。大違いです。モーター駆動の最大の特徴は「設計通りにいく」ことです。

 潤滑の状況など、機械式は不確定要素が多く時間遅れが生じがちです。時間遅れがあるということは、その遅れている時間分のコントロールも必要になってくるので何かとややこしくなる。電動はそれが少ない。

F:モーターは設計通りになる。なるほど。設計もやりやすくなりますか。

:やりやすくなります。機械式に比べると、電動はうんとやりやすい。

F:すると電動は機械式に比べて設計工数が少なくて済むのですか。電動は開発期間や開発工数の削減にもつながると言えますか?

:開発工数ですか……そこはまたちょっと微妙でして……。

 先程申し上げたように電動はパラメーターが多く自由度が高い。自由度が高いということは、イコールで決めなくちゃいけないことが多くなるということです。

 例えば今回の4駆は、リアでもエネルギーを回生しています。アクセルオフのときに前輪だけでなくリアのモーターでもエネルギーを回生しているのですが、そのときの路面ミュー、車速など、その時その時の要素を取り込みながら、どれくらいの回生量にするかを瞬時にパッと決めているんです。できることが増えるということは、その部分を設計するということになるので。

 減速時における後輪エネルギー回生の“劇的な効果”は、前回記事の関越道藤岡ジャンクションの件で述べた通りだ。

前回記事・日産の逆襲始まる。オーラは雪上のスポーツカー

F:できることが多くなればなるほど、決めなくてはいけないことが増える。当然その部分の設計工数は発生する、ということですね。

:その通りです。だから今までのクルマと同じ機能しか求めない、という前提であれば、フェルさんの言う通り設計工数は少なくなるのかもしれません。でも今回のオーラは、今までよりもうんと高度な制御を行っているので。

F:機械式4駆より、電気式4駆のほうが優れていると言えますか。なかなか言いにくいことだと思いますが(笑)。

:はい。電気式4駆のほうが優れていると思います。ただ、ただですよ。それは後輪にどれだけのモーターを積むかということによりますよね。