「オートモーティブ」から「オートテック」へ。

 ビッグ3の一角を占めていたGMが、アメリカの自動車産業の代表選手であった“あの”GMが、自動運転とEV化を旗印にこれからはテックカンパニーになるという。

 それを象徴するように伝統のロゴマークを変更し、次世代次々世代の自動運転システムを矢継ぎ早に発表する。今回の取材は驚きの連続だ。さらには販売台数を追求せず、それでもプロフィタブルな会社にするために「クルマに付随する様々な価値」を創造していくのだと言う。ではGMが標榜する“様々な価値”とは何だろう。今回はその辺りから伺おう。

上原慶昭・GMJプロダクト&パブリックポリシー ディレクター(写真中央)、安部麻甲・同マーケティング&コミュニケーションズ ディレクター(右)
上原慶昭・GMJプロダクト&パブリックポリシー ディレクター(写真中央)、安部麻甲・同マーケティング&コミュニケーションズ ディレクター(右)

フェルディナント・ヤマグチ(以下、F):クルマに付随する様々な価値とは何でしょう。ありていに言ってこれからのGMはどのようにして儲けるのか。具体的に教えてください。

上原慶昭・GMJプロダクト&パブリックポリシー ディレクター(以下、上原):今みなさんはスマートフォンを使って普通に買い物をされますよね。それをクルマの中で、簡単にできるよう環境を整える。あるいは商用車の配送ビジネス。昨今は小口配送の需要が非常に高まっていますが、ドライバーが足りずに配送が遅れるという問題が出ています。これをネットワーク化して効率を上げて最適化する。テクノロジーを使ってレベニューオポチュニティーをもっと広げていきましょう、ということです。

F:先月ソニーグループが「ソニーモビリティ株式会社」を設立して自動車を販売すると発表しました。ソニーは何年か前からデモカーは造っていましたが、その目的は「あくまでセンサー技術向上のため」であり、車両の販売は予定していないと言ってきました。それがここへ来て「EVの市場投入を本格的に検討する」と発表した。

上原:はい。先月のCESで吉田社長(ソニーグループ会長兼社長CEOの吉田憲一郎氏)自らが発表されましたね。

F:私の本業の繋がりで、ソニーの厚木テクノロジーセンター(半導体部門)の方とお話する機会があるのですが、その人が「いや、ウチは何もクルマ単体で儲けようとなんかしていませんよ」と言うんです。ウチには映画があって音楽があってゲームがあるんですよと。いくらソニーカーが売れたって、搭載されるCMOSセンサーの数なんか知れている。それよりも車内で楽しめる、そうした豊富なコンテンツと共に金融があると。ソニーで自動車ローンを組んでソニーで自動車保険に入ってもらう。こうしてグループ全体で利益を上げていくんです、と。自動車とは直接関係のない部署の人の発言ですが、さすがソニーと唸らされたものでした。

上原:なるほどソニーさんにいる方がそのように。ですがその部分ならもうすでにGMもやっています。GMは伝統的にクルマのファイナンスが非常に強くて、昔から大きな収益源になっています。長年蓄積したお客様のいわゆるビッグデータが豊富にありますから、それを活用した自動車保険の販売も始めています。車種やお客様の特性によって事故の発生率は大きく異なりますから、最も適した保険のご提案ができるんです。そのソニーの方がおっしゃるサービスは、すでに我々が提供していることですよね。

F:GMのクルマを買う人は、みなさんGMでローンを組んでいるんですか?

安部麻甲・GMJマーケティング&コミュニケーションズ ディレクター(以下、安部):そのようにお勧めしています。

上原:実は日本ではまだ伸び代があるところなのですが(苦笑)。

F:しかしGMがEVですか。これも時代なのでしょうか……。

安部:ここへ来てGMが発信するメッセージもかなり変わってきています。2021年のCESのときには「誰でも使えるEV」ということで「Everybody In」というキャンペーンを張りました。これは選ばれた人だけではなく、性別、年齢も関係なく、もしくはいろいろなバックグラウンドも関係なく、誰も取り残すことなく、我々が提供するEVのメリットを享受いただけるようにしていくということです。インクルージョンという言い方が今、世の中で非常に大きくなっていますけれども、GMは世の中で最もインクルーシブな(inclusive:包容力のある、包括的な)会社になろうとしています。

この先、コルベットもEVになるのか?

F:なるほど。素晴らしい。企業のフィロソフィーを明確にして、会社のロゴまで変えて企業姿勢をアピールして、そんなGMが売り出した6.2リットルもの巨大なエンジンを搭載するコルベット。今いただいたお話からすると、何と申しますか……まったく逆の方向のクルマを生産されているわけですが、コルベットの存在はどのようにご説明なさるのでしょう。

上原:コルベットのお話をするのであれば、コルベットの歴史から始めたいところです。

F:それとこれは別だよ、ということですか?

上原:別ではありません。コルベットは2023年モデルで70周年になるんです。同じスポーツカーのブランドを長年守り続けるのはなかなか大変なことでして、他社さんにも尊敬すべきスポーツカーはありますが、冷静に見渡してみると、やはりそう多くはない。

次ページ よくミッドシップにしましたよね