前回(こちら)は「ハーレーダビッドソン」というバイクの位置付けを伺った。

 ではその顧客とはどのような人なのだろう。正直な話、ちょっとアウトローなイメージもある。忌憚のないところを伺おう。

ハーレーダビッドソン ジャパン代表取締役、野田一夫氏さん(※撮影時に、短時間マスクを外していただきました)
ハーレーダビッドソン ジャパン代表取締役、野田一夫氏さん(※撮影時に、短時間マスクを外していただきました)

フェルディナント・ヤマグチ(以下、F):ここで少しハーレーの“乗り手”についてお話を伺います。

 確かにハーレーは認知度が高い憧れのバイクです。輸入車の代名詞と言ってもいい。ニューモデルに予約が殺到しているとも伺っています。ですが一方で、どうしてもアウトローのイメージが付きまとってしまう。いまさらヘルズエンジェルスでもないでしょうが、乗っている人は何となくオラオラしている印象が強い。私がハーレーの試乗車でツーリングに出かけた時に声を掛けてきたハーレー乗りの人は、開口一番に「あんた、ハーレー初心者だろ?」と超上から目線で言ったものでした。

ハーレーダビッドソン ジャパン代表取締役、野田一夫氏(以下、野):どんな方でしたか? 年配の方ですか。

F:年配の方です。お爺さんと言っていい感じの方でした。「キミね。そんなカッコでハーレーに乗っちゃダメだ。そもそもハーレーはフルフェイスのヘルメットで乗るものじゃない。半キャ(※)で乗らなきゃいかん」と。(※編注:半キャップ、半帽、耳を覆わないタイプのヘルメット)

:ははぁ……。

F:ハーレーは馬の代わりで、本場アメリカではみんなノーヘルで乗っていると。それを試乗車を運んでくださったハーレーのスタッフに話したら、「はあ? 何十年前の話ですか。半キャがマストだなんてとんでもない。今アメリカの若い人の多くはフルフェイスでハーレーに乗っています。敢えてオフロード用のヘルメットを被るのがちょっとしたハヤリになっているくらいです」と言われました。いったいどちらが正解なのでしょう。

:後者の説明が正しいと思います。ハーレーは良くも悪くもブランドの認知度が非常に高い。そして熱烈なファンがたくさんいらっしゃいます。その中には今おっしゃったような、「ハーレーかくあるべし」と強く主張する方もいらっしゃる。

F:そんな印象はありますよね。アウトローに見えても俺は俺の道を行く、みたいな。

ブランド力が強いがゆえに変われない部分があった

:ちょっと近寄り難いようなイメージの方々。その人たちにとっては、そこがやはり「ハーレーの世界」なのだろうと思いますし、そういう方々が長らくハーレーダビッドソンを支えてきてくださったのは紛れもない事実ですし、大事にしなければいけないと思います。一方で、そういう人たちのイメージが自分には合わないので「欲しいけれど、やっぱり買うのはやめておこうかな」、と思われる方もいらっしゃるでしょう。

F:ハーレーに興味はあるけれども、色眼鏡で見られるのが嫌だから躊躇してしまう。

:アメリカでは本当に広い層の方に乗られているのですが、日本ではどうしてもそうしたちょっと強面のイメージが固まってしまっていて……実際は違法改造みたいなのも激減しましたし、ハーレーダビッドソンオリジナルのアパレルを楽しんでくださる若い方も増えて、従来とは大きく変わっているのですが、やっぱりそのイメージを消し切れないでいる。

 繰り返しになりますが、ハーレーダビッドソンのイメージが、ブランド力が強いがゆえに、変われていない部分があるんです。そこを変えていかなければいけません。

F:難しいですね。これを変えるのは本当に難しい。でもまさか今までのお客さんに「あなたたちはもう違うので」とは言えませんものね。

:これからはライフスタイルとしての方向性を訴求していきたいですね。オートバイに乗って、ファッションも楽しんで、人生がより豊かになる。そういうところを訴求していきたい。

F:それを言葉で言い表すことはできますか?

:「世界で最も憧れのモーターサイクルブランドになる」ということです。

 これは我々のスローガンでもあります。“大型バイク=ハーレーダビッドソン”という図式がある。今さらそうじゃないだろうという方もいらっしゃると思いますが、そこは今でも一番に思い浮かぶ部分だと自負しています。じゃあ本当にみんながみんなハーレーダビッドソンに絶対乗りたいのかと言われれば、残念ながらそうではない。いまだにヘルズ・エンジェルスのイメージが残っていたり、「正直、年長者が乗るバイクだよね」と思われてしまったりする部分もある。例えばカワサキ(カワサキモータースジャパン)のプラザさん(カワサキブランドのバイク専門店)。あそこはきれいでスマートで、あっちのほうが断然イケてるよね、と感じる方も実際にいらっしゃる。

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