スマホを置き忘れて階下にコーヒーを淹れに行き、書斎に戻ってきたら通知が届いている……なんてこともあります。慌てて「現在地報告」のボタンをタップしても手遅れで、「遅えよバーカ」と言わんばかりの無常のサインが出たりする。
いや私、ちゃんと家にいるんですよ。いま下に行って、コーヒーを淹れてきただけなんですよ。信じてくださいよ……と言いたくても言う相手がいない。抗弁の余地がないのです。だから短時間の外出時はもちろんのこと、トイレに行くにも、風呂に入るにもスマホを携帯することになる。風呂くらいゆっくり入りたい。
入浴中もトイレ中もお構いなし
さらに1日に何度かビデオ電話がかかってくる。
用を足していようが浴槽に浸かっていようが、こちらの都合などお構いなしに電話がかかってくる。そしてマスクを外して素顔が分かるよう準備せい、とAIから指示が出される。
風呂に入るときくらい勘弁しろよと思うのですが、まるで狙っているかのように、入浴中やトイレ中に限って電話がかかってくる。かくして浴槽に浸かったフェルの特出しヌード姿や、便器に腰掛け奮闘中のアホ面が録画されることになる。しかもこの動画撮影は、キチンと背景が映りこむように撮影することが求められる。背景とGPSによる位置情報を合わせて、誓約通りに自宅にいるかどうかをAIが判断するのだそうです。人のこんな姿を見て何が面白いのか。データの管理はキチンとされているのか。私の入浴シーンやトイレ中の姿が流出したらどうしてくれるのか。
いや、マジ面倒です。こんな暮らしがあと1週間も続くのか。
そしてこのシステムには大きな欠陥がある。
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