これが噂のMySOSアプリです。GPSと連動しており、タップすると位置情報がセンターに送られる。家から離れた場所にいると、厳しい文言とともに、「誓約違反」と叱られる。空港で何枚もサインした紙のうちの1枚に、誓約書が含まれていたらしい。言われるがままに、ロクに書面も見ないでサインしたものなぁ。
これが噂のMySOSアプリです。GPSと連動しており、タップすると位置情報がセンターに送られる。家から離れた場所にいると、厳しい文言とともに、「誓約違反」と叱られる。空港で何枚もサインした紙のうちの1枚に、誓約書が含まれていたらしい。言われるがままに、ロクに書面も見ないでサインしたものなぁ。
[画像のクリックで拡大表示]
このサインが出たら、すぐにタップしなければいけない。そしてこのサインはすぐに消えてしまう。スマホを音の出る状態にして、自分のすぐそばに置いておかなければならない。非常に面倒臭い。
このサインが出たら、すぐにタップしなければいけない。そしてこのサインはすぐに消えてしまう。スマホを音の出る状態にして、自分のすぐそばに置いておかなければならない。非常に面倒臭い。
[画像のクリックで拡大表示]

 スマホを置き忘れて階下にコーヒーを淹れに行き、書斎に戻ってきたら通知が届いている……なんてこともあります。慌てて「現在地報告」のボタンをタップしても手遅れで、「遅えよバーカ」と言わんばかりの無常のサインが出たりする。

時間内にタップすると、このようなサインが出る。
時間内にタップすると、このようなサインが出る。
[画像のクリックで拡大表示]

 いや私、ちゃんと家にいるんですよ。いま下に行って、コーヒーを淹れてきただけなんですよ。信じてくださいよ……と言いたくても言う相手がいない。抗弁の余地がないのです。だから短時間の外出時はもちろんのこと、トイレに行くにも、風呂に入るにもスマホを携帯することになる。風呂くらいゆっくり入りたい。

時間内にタップできないと、このように「遅えよバーカ」と言わんばかりのサインが出る。大変申しわけございません。でもボクちゃんと家にいるんですよ。
時間内にタップできないと、このように「遅えよバーカ」と言わんばかりのサインが出る。大変申しわけございません。でもボクちゃんと家にいるんですよ。
[画像のクリックで拡大表示]

入浴中もトイレ中もお構いなし

 さらに1日に何度かビデオ電話がかかってくる。

 用を足していようが浴槽に浸かっていようが、こちらの都合などお構いなしに電話がかかってくる。そしてマスクを外して素顔が分かるよう準備せい、とAIから指示が出される。

 風呂に入るときくらい勘弁しろよと思うのですが、まるで狙っているかのように、入浴中やトイレ中に限って電話がかかってくる。かくして浴槽に浸かったフェルの特出しヌード姿や、便器に腰掛け奮闘中のアホ面が録画されることになる。しかもこの動画撮影は、キチンと背景が映りこむように撮影することが求められる。背景とGPSによる位置情報を合わせて、誓約通りに自宅にいるかどうかをAIが判断するのだそうです。人のこんな姿を見て何が面白いのか。データの管理はキチンとされているのか。私の入浴シーンやトイレ中の姿が流出したらどうしてくれるのか。

 いや、マジ面倒です。こんな暮らしがあと1週間も続くのか。
 そしてこのシステムには大きな欠陥がある。

この記事は会員登録で続きをご覧いただけます

残り2783文字 / 全文6643文字

日経ビジネス電子版有料会員なら

人気コラム、特集…すべての記事が読み放題

ウェビナー日経ビジネスLIVEにも参加し放題

バックナンバー11年分が読み放題

この記事はシリーズ「フェルディナント・ヤマグチの走りながら考える」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。