GSトロフィーとは、「世界一のGS乗り」の称号を賭けたBMW主催のアドベンチャーツアーである。厳しい国内予選を勝ち抜いた選手が、世界中から集って知力・体力・ライディングスキルを競い合うGSの祭典である。

:私の場合はうまく潜り込んだようなものなのですが……(苦笑)。

 ともかくGSトロフィーでカナダに行って、そこにドイツのツアラテックの社長さんも来ていて、意気投合していろいろ話しているうちにビジネスにまで発展してしまったんです。「いや、おたくのパーツは本当にいいですね」「本当にそう思うか?」「思います。日本でも売ればいいのに」「そう思うなら君が売ってよ」なんて感じで(笑)。

 ツアラテックは非常にBMWと近い会社で、例えばGSの後ろに付ける金属製のトランク。パニアケースというのですが、BMWの純正品はツアラテックのOEMなんですね。

F:水谷さんは、もともとツアラテックのパーツを装着されていたのですか?

:いえ、使っていませんでした。というか、ツアラテックというパーツの存在自体を知りませんでした。欧州では既にスタンダートな商品だったようですが、その頃の僕は、あまりパーツに興味がなかったんですね。乗る方ばかりに集中していて、パーツはまぁ転んだときに壊れなければいいや、くらいの認識で(笑)。

名古屋からハイラックスにGSを載せて練習会に参加されたGSフリークの方。簡単そうに見えるが、この重量級バイクを高い荷台に乗せるには相当な技量が求められる。
名古屋からハイラックスにGSを載せて練習会に参加されたGSフリークの方。簡単そうに見えるが、この重量級バイクを高い荷台に乗せるには相当な技量が求められる。

F:バイクは今までにどれくらい乗ってこられたのですか?

:所有したのは50台くらいですかね。今でも10台以上ありますし。父親が大和のバイク屋で働いていて、僕は5歳の頃から乗っているんです。GT50とかミニトレとか小さいバイクを買ってもらって、店の近くの原っぱで毎日ぐるぐるぐるぐると。子供だから免許がない。バイクもナンバーが付いていない。父親からは公道を走るんじゃないよ、と言われていたけれど、原っぱまで押していくのが面倒だから、小学生になった頃からエンジンをかけて1速半クラでラクして押すようになった。そしてそのうち、「ちょっとだけならいいだろう」と公道でも乗るようになった。TY80というトライアルバイクだったかな。帰るときは店の少し手前で降りて、知らん顔して「ただいまー!」なんてね(笑)。

 田舎だから誰も見ていないし、誰かに見られたところで、「お、ボク上手だな」と、怒られるどころか逆に褒めてもらえたりした。昔はおおらかだったんです。調子に乗ってバンバン土手道を走っていたら、最後は近所の人に見とがめられて通報されちゃった。夜に白バイの警官が来て、「お宅のお子さんがバイクを乗り回していると通報があったんです」と。そりゃそうですよね。何しろ小学生に入ったばかりで、誰がどう見たって子供なんだから。父親は商売のこともあるし青くなっていたけれど、僕は2階で布団にくるまってクスクス笑っていました。「お父さんもお願いしますよホント」なんて声が下から聞こえてきて(笑)。

GSというバイクは「何にでも使える」

 幼少の頃からバイクに親しんで来た水谷さん。所有してきたバイクは実に50台超! バイクの裏も表も知りつくした人が、いかにしてGSに行き着いたのだろう。GSのどこがそれほどよかったのか。

:今でもたくさんのバイクを持っていますが、やっぱりメインはGSです。GSの出番が圧倒的に多い。なぜかって、やっぱり一番いいんですよ。乗りやすいし安全だし。そして何よりこのGSというバイクは「何にでも使える」ということです。

 たくさんの荷物を積んで高速に乗ってロングツーリングへ行くこともできる。キャンプ道具を積んでキャンプへも行ける。ブロックタイヤを履けばオフロードも楽しめる。このバイク一台で、何でもできちゃうんです。もちろん軽量車のようなアタックは厳しいし、オフと言っても限度はあります。でもちょっとした丸太を乗り越えるとか、沢を渡るとか、低い速度でも冒険心を満たすことができる。フェルさんが乗っているのはハスクバーナのFE250でしたよね。あのようなエンデューロ系のバイクなら楽勝で越えられるようなギャップも、GSなら結構な冒険です。同じコースを走っても、大きなバイクだと軽量とはまた違う達成感を得られるんです。

え? GSを2台載せるんですか? しかも逆向きに? いくらなんでもそりゃムチャでしょう……。
え? GSを2台載せるんですか? しかも逆向きに? いくらなんでもそりゃムチャでしょう……。

F:確かに大きなバイクは、普通に乗っているだけで、達成感、優越感を得られますよね。その感覚はよく分かります。それがオフに入ったらひとしおであるということも理解できます。ただ大きなバイクの優越感というのは両刃の剣で、乗り方やマナーによっては嫌らしくなってしまいませんか。輸入車マウントとか、排気量マウントとか取る人がいるじゃないですか。実際に私はハーレーのバイクを試乗してツーリングに出かけた際に、知らないハーレーおじさんに「あんたハーレー初心者だろう」と思い切りマウントを取られました。GSにそれはないのでしょうか?

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この記事はシリーズ「フェルディナント・ヤマグチの走りながら考える」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。

セミナー開催 フェルディナント・ヤマグチ流「部下育成」!

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 今回、課長塾オンデマンドではあえて、「企業人としてのヤマグチ氏として、登壇してください」とお願いしました。なぜならヤマグチ氏は、「コラムニストとの両立」という多忙な生活を、20年もの長きに渡り成立させてきた人だからです。本セミナーでは、そんなヤマグチ氏ならではの(仕事についての)方法論に迫ります。

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