止まると死ぬほど重くて泣きそうになるR 1250 GSだが、これが走り出すと夢のようにスッと軽くなる。コーナーを面白いようにひらりひらりと抜けていくことができる。

 背の低い(その分横に広い)水平対向エンジンを低い位置に搭載しているので重心が低く安定性に優れているのは理解できるのだが、それにしてもこの重量でこの軽快さはどうしたことだろう。他のメーカーのバイクとは明確に違う「何か」があるに違いない。

 その「何か」とは何か。詳しく伺っていこう。

BMWモトラッド リテールビジネスディベロップメント&カスタマーケアテクニカル・マネジャー 平野 司さん
BMWモトラッド リテールビジネスディベロップメント&カスタマーケアテクニカル・マネジャー 平野 司さん

フェルディナント・ヤマグチ(以下、F):しかしGSは本当によくできていますね。高速道路では本当にピタッと安定して、まったく恐怖心がなくリラックスして飛ばすことができる。これは車重が重いから理解できます。ですがその一方で、山道に入ってもスイスイと楽しくコーナーを抜けていくことができる。直進安定性もコーナリングも両方ともいいんです。バイクって普通はどちらかに偏るものじゃないですか。GSはどうしてこの相反する要素が高い次元で両立できているのですか?

BMWモトラッド リテールビジネスディベロップメント&カスタマーケアテクニカル・マネジャー 平野 司さん(以下、平):フェルさんは先程からGSが重い重いとおっしゃいますけれど……。

F:実際に重いですよね。車重は実に256キロもある。僕が普段乗っているバイクの倍以上もあります。尋常じゃない重さだと思います。

:停車状態から押したり引いたりしようとすれば、押し始めの出だしの部分では確かに重たく感じるかもしれません。でも実際に動き出したらどうでしょう。手で押していてもスッと軽く動きませんでしたか?

F:ああ、確かに動き出してしまえばそうでした。ベアリングの精度がいいのでしょうか。

:ベアリングの精度もそうですが、組み付けの公差とか、機械加工の精度とか、バイクを製造する上での技術がうんと向上してきているんですね。エンジンを掛けて走り出すと、もう重量なんか気にならないくらいに軽くなるでしょう。

F:単純にエンジンが強力だから、トルクが太いからということではないのですか?

:これはBMWのクルマとも共通していることなのですが、まずは重量のバランスです。限りなく前後荷重を50:50に近付けています。もちろん乗る人のポジションの取り方やパニアケースの装着などで前後バランスは変化してしまいますが、基本設計は前後50:50で造っています。重心が中央にある。だからバランスがよく、取り回しがよくなる。これが一つ。もう一つはGS特有の足回りです。

F:写真をたくさん撮りました。テレレバーでしたっけ?

テレレバーの謎に迫る

:そう。テレレバーです。前側に三角形のおむすびのような形をした足回りが付いています。

F:カウルに囲まれているので、パッと見フロントはフロントフォークが2本伸びた普通のサスペンションなんですよね。でも中をのぞき込むと複雑な形状をした足回りが見える。中央には大きなバネも見える。バネはあの真ん中の大きなやつだけで、前のフォークの中には入っていないのですか? あれはダンパー機能だけ?

:いえいえ。もちろんフォークの中にもバネが入っています。バネの他に電気制御で開閉する弁が入っています。これで封入されたオイルの流量を調整してサスペンションの硬さを調整しています。ライダーから見て左側のダンパーが。

F:左側だけ硬さが変わるのですか? 右側は何もしていない?

:右側は何もしていません。もちろんダンパー機能はありますが、電気的な制御は何もしていません。

F:左側だけ硬くしたら、左右のバランスが崩れてブレーキを掛けたときにグワッと右に曲がってしまったりしないんですか。

:それはないです。ありえない(苦笑)。フォークブリッジが上下についてますから、ちゃんと左右均等に沈みます。

F:そうそう。普通のバイクは前ブレーキを強く掛けると、フロントサスペンションがグッと縮んでノーズダイブしますよね。でもGSにはそれがない。これはどうなっているのでしょう。

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