ホンダにヤマハにスズキにカワサキ。世界に冠たるバイク王国である日本において、ジワジワとファンを広げつつある輸入バイク。いま輸入バイクはどうなっているのか。その中でBMWのバイク部門であるモトラッドの立ち位置はどのようなものか。
 BMWモトラッドの中根知彦さんと平野 司さんにお話を伺った。

BMWモトラッド ブランド ナショナル・マーケティング・マネジャー 中根知彦さん
BMWモトラッド ブランド ナショナル・マーケティング・マネジャー 中根知彦さん

フェルディナント・ヤマグチ(以下、F):日本のあるバイクメーカーの方と話していて、ここ30年以上ズルズルと売り上げが落ちていたところに新型コロナが来て、流れが変わったと。コロナの影響でライフスタイルが大きく変化して、中古も新車もバイクが飛ぶように売れるようになったと聞きました。

BMWモトラッド ブランド ナショナル・マーケティング・マネジャー 中根知彦さん(以下、中):おかげさまでよく売れています。日本のバイク市場全体を去年の1~8月と今年の1~8月を単純に比較すると、実に40%も伸びています。特に今年は国産メーカーの当たり年で、各社が続々とニューモデルを投入しているので、いわゆる「新車効果」も効いています。ホンダのGBシリーズとか大変なことになっていますから。

F:売れている一方で、オイシイ大型はみんな輸入バイクに持っていかれてしまい、国産メーカーは困惑しているようです。バイクはやっぱり大きいほうが儲かりますので、とボヤいていますもの(笑)。いま中根さんがおっしゃったGBにしても、350ccの中型バイクです。昔のGBは500ccもあったのに、今回は400cc以下に抑えてきた。これから追加で大きいのを出すのかもしれませんが。

:そうですね。国産で当たっているのはやはり中型免許で乗れる排気量が小さいモデルですね。そういうモデルが市場を牽引しているのが現状です。大きくてもリッター超え(1000cc以上のバイク)をしないモデル。これは輸入車でも同じ傾向で、例えばトライアンフなんかも今すごく伸びているのですが、引っ張っているのはトライデントというニューモデルです。これもそんなに排気量が大きくない。

 おかげさまで我々BMWも安定して売れているのですが、やはり1800ccなどの大型マーケットは限られています。国産のようなドーンという伸びはないですね。正直なところ。

F:なるほど。

:先程フェルさんが「ライフスタイルの変化」とおっしゃいましたが、それは我々も強く実感しています。その一つがキャンプです。みなさん本当にバイクでキャンプに行くんですよ。タレントのヒロシさんじゃないですが、みなさんソロツーリングへ行って、そのままキャンプするんです。肌感覚として、これがいま一番ホットな感じですね。

高橋マンちゃん:フェルさんの一番苦手なヤツですね。単独行動(笑)。

F:一人で山の中に泊まるとかマジありえんわ。寂しすぎる。だいたいみんな山の中まで行って一人で何をするのよ。スマホをチクチクやってメールしたり、焚き火の写真を撮って「孤独を楽しんでいます」とかSNSに上げたりしているんじゃないの(笑)。

高橋マンちゃん:ソロのときにはほとんどスマホなんて触らないですよ。焚き火を見つめながら一人でボーッとするのがいいんです。まあフェルさんには一生理解できないと思いますが……。

:少し前までは、SUVに大荷物を積んで大人数でキャンプ、みたいな感じが主流だったのですが、最近はもう完全にソロですね。ソロでの行動。ソロでのキャンプというライフスタイルが最も熱いです。装備もごく軽いもので、ほとんどビバーク(露営)のような感じで。マーケをやっていて、さまざまなメディアさんとやり取りがあるのですが、どこの取り扱いもそういうソロ方向の記事がほとんどです。

F:時代はソロですか。個の時代ということなのでしょうか。

:ソロというだけではなく、装備もどんどん軽い方向に行っています。前はコールマンやスノーピークの大型ファミリーテントを張って立派なランタンを何個も並べて音楽を流して……という方向だったのですが、今はもうナイフ一本、マッチ一本で火を起こしちゃう、みたいな。

 そういう流れの中で、BMWには今回フェルさんに乗っていただいたGSがいてくれたおかげで、本当にいいビジネスができています。オフロードでもガンガン走れるGSがウチの屋台骨を支えていると言っても過言ではない状況です。

BMWモトラッド リテールビジネスディベロップメント&カスタマーケアテクニカル・マネジャー 平野 司さん
BMWモトラッド リテールビジネスディベロップメント&カスタマーケアテクニカル・マネジャー 平野 司さん

 ここで別の打ち合わせのために遅れて参加の平野さんの登場だ。
 平野さんは技術のエキスパートで、バイクの技術について詳しくご説明いただく。

BMWモトラッド リテールビジネスディベロップメント&カスタマーケアテクニカル・マネジャー 平野 司さん(以下、平):そもそも車名からしてオフロードですから。GSという名前は、“ゲレンデ・シュトラッセ”の頭文字です。シュトラッセはドイツ語で「道」という意味。英語のストリートと同じです。そしてゲレンデは「山野」という意味です。ゲレンデ・シュトラッセ。GSはオンロードでもオフロードでもガンガン行ける、という意味なんです。

F:なるほどなるほど。要するにオン&オフ。

:例えばドゥカティさんがこのセグメントで出しているモデルは「ムルティストラーダ」です。これは英語で言う「マルチストリート」。つまりどんな道でも行けますよ、という意味です。そしてこのセグメントを一番初めに出したのがBMWです。今から40年前のことになります。

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