“ホリエモンロケット”として知られるインターステラテクノロジズ(IST)の観測ロケット「MOMO」の打ち上げが成功した。同機はISTが打ち上げ高度100キロメートルに到達することを目的に開発しており、打ち上げ実験は7回目。高度100キロの宇宙空間まで到達したのは今回を含めて3回目になる。7回の打ち上げで3回成功したのだから、“打率”は4割2分9厘だ。野球に例えれば結構な高打率打者と言える。

打ち上げ成功の記者会見
打ち上げ成功の記者会見

 そもそもホリエモンロケットとは何か。どのような仕組みになっているのか。
 インターステラテクノロジズを率いる若き社長、稲川貴大(たかひろ)氏にお話を伺った。

 なお、このインタビューは6月3日に実施された7号機(7月31日に打ち上げられたのは6号機。整備の関係で順番が前後したのだ)の打ち上げ直前に、ロケットを前にして行われた。2カ月も寝かせてしまったのは、マツダ梅津氏の記事が“想定外”に長引いてしまったからだ。

朝4時過ぎに打ち上げ前のロケットを特別に見せていただいた。蛇腹のシートが開かれ、ロケットが姿を現した。「意外と小さいな」というのが第一印象だ。
朝4時過ぎに打ち上げ前のロケットを特別に見せていただいた。蛇腹のシートが開かれ、ロケットが姿を現した。「意外と小さいな」というのが第一印象だ。

 観測ロケットMOMOの機体は全長わずか10メートル。直径は50センチである。

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)が基幹ロケットとして位置付けるH-IIAロケットの全長は53メートル、直径は4メートルもあるのだから、それと比較するとかなり華奢に見える。正直、「これで本当に宇宙まで行けるのだろうか……」と不安になるくらいの大きさだ。

 それでは早速お話を伺おう。インタビューの時刻は午前4時半。
 我々の背後では、まさにこれから宇宙に飛び立たんとするロケットの打ち上げ準備作業が着々と進められている。

インターステラテクノロジズ 稲川貴大社長
インターステラテクノロジズ 稲川貴大社長

フェルディナント・ヤマグチ(以下、F):今日はよろしくお願いします。打ち上げ直前のお忙しい時にお時間をいただき恐縮です。

インターステラテクノロジズ 稲川貴大社長(以下、稲):いえいえ、大丈夫です。ここまで来ると、あとはもうスイッチを押すだけですから。雲の動きと風向きと、あとは海上の船の動き次第ですね。

F:海上の船ですか? 船とロケットにどのような関係が?

:このロケットは打ち上げたら放物線を描いて海に着水します。着水予定海域は海保(海上保安庁)と連携しながら航行しないよう各船舶に要請しているのですが、強制力があるわけではありません。海外の貨物船とか遠回りするのが嫌だから、「そんなの関係無ぇ」とばかりに要請を無視してトコトコ海域に入ってきてしまうことがあるんですよ。ですから打ち上げの時は海上レーダーとにらめっこです。進行方向と航行速度を見れば、「この船がヤバい」ということが分かりますので。実際に船が進入してきたおかげで、打ち上げが延期されてしまったこともあるんです。

いったいどこからが宇宙なの?

 航空管制との調整、海保との調整、さらには半径5キロにも及ぶ地域の入場規制。ロケットの打ち上げにはさまざまな調整作業が必要なのだ。

F:このロケットは具体的にどれくらいの高さまで上がるのですか?

:地上から100kmまで上がります。ペイロード(可搬重量)は30kgです。
 アメリカ空軍は地上80kmから上を宇宙と定義しています。また国際航空連盟(FAI)という組織は、高度100kmから上を宇宙としています。我々はFAI基準に合わせています。

今回のロケットはねじを中心とした120万種類の締結部品を取り扱う<a href="https://www.sunco.co.jp/" target="_blank">サンコーインダストリー</a>がネーミングライツを獲得し、「ねじのロケット」と命名されている。先端部分がネジをイメージしたカラーリングになっている。
今回のロケットはねじを中心とした120万種類の締結部品を取り扱うサンコーインダストリーがネーミングライツを獲得し、「ねじのロケット」と命名されている。先端部分がネジをイメージしたカラーリングになっている。

F:国際的には高度100kmから上を宇宙と言うのですね。つまりそこが成層圏ということですか。

:いえ成層圏はもっと下です。だいたい10kmから50kmくらいまでが成層圏。その上に中間圏があり、さらに上に熱圏と呼ばれる層があります。そこでは原子や分子が電荷を帯びたプラズマ状態となっているので電離層とも呼ばれています。大きな人工衛星が飛んでいるのはそのあたりですね。だいたい高度400kmから500kmまでが大気圏と呼ばれています。

F:なるほど大気圏。そこから外が外気圏ですね。完全に空気がなくなるエリア。

:厳密に言うと大気は1000kmあたりまで痕跡があると言われています。大気は何km行ったらバシッとなくなる、という性質のものではないんです。ただ、衛星の動きに影響を与えるのは高度200kmくらいまでですね。それ以上の高さになると、ほとんど無視できるレベルです。

F:いきなり下世話な話をして恐縮ですが。このロケットは1回打ち上げるのにいくらくらい掛かるものなのですか?

:打ち上げ費用としていただいているのは1回当たり5000万円です。

F:つまり5000万円払えば「フェルロケット」を打ち上げることも可能であると。

:はい。上げられます。ぜひお買い上げください(笑)。

F:ハイエースを買ったばかりなので、ロケットはもう少し先かな(笑)。
 先程海に着水すると伺いましたが、アメリカのロケットみたいに途中で燃え尽きたりはしないのですか。着水するにしても、丸焦げの状態で落ちてくるのですか?

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