マツダ自慢のG-ベクタリングコントロール。そのEV版「e-GVC Plus」。
 乗れば乗るほど素晴らしく、聞けば聞くほど興味深い。
 EVとの相性もバッチリで、「これがマツダの進む道」と言うのであれば、万歳三唱で歓迎したい。しかもこのMX-30 EVモデルはFF仕様なのだ。これが4駆になったら、いったいどんなクルマに仕上がるのだろう。

 今回はその辺りから聞いていこう。場面はマツダのテストコースを、スローペースで流しているところである。

車両開発本部 操安性能開発部 上席エンジニア 梅津大輔さん(写真右)
車両開発本部 操安性能開発部 上席エンジニア 梅津大輔さん(写真右)

フェルディナント・ヤマグチ(以下、F):しかしこのG-ベクタリング(GVC、今回はEV専用のe-GVC Plus)は本当によくできていますね。不安なくコーナーをガンガン攻めていくことができる。機能のオン・オフで試させていただいて(※)、これほどの差が出るものかと感嘆しました。(※オン・オフは試作車のみ可能)

車両開発本部 操安性能開発部 上席エンジニア 梅津大輔さん(以下、梅):飛ばすとGVCの有効性が如実に表れるので分かりやすいですが、実は今みたいにゆっくり走っているときでも制御は効いているんです。そこがポイントです。車両運動制御といったら、たとえば(三菱自動車の)ランサーエボリューションのように、何かものすごく高いGの領域で効くイメージがありますが、それだけじゃありません。このGVCは日常使いの領域でも、しっかり効くというところがポイントです。Gの高い領域で効くのはもちろんとても大事ですよ。危険回避もできますしね。でもこういう日常の領域も、何か接地感いいな、クルマを動かしている実感があるな、というところはとっても大事だと思っています。

F:乗った感覚のよさというのは分かるのですが、どこでどのように効いているというのがまったく分からないですね。

:そりゃそうです。分からないように造っていますから。分かってしまったら、それこそ違和感がある、介入したといわれてしまいます。分からないけれど何となく安心できるよね、すごく接地感があるよね、そう言ってもらえるのが僕らの狙いなので。そういう意味で、フェルさんはドンピシャです。我々の狙い通りです(笑)。

F:なんかマツダの術中にハマったみたいでイヤだな(笑)。
 しかしこれ、FFなんですよね? これが4駆になったらどうなるのだろう。すごいクルマになるのではないですか?

:4駆と併せたら、もっとすごい領域に踏み込めます。今よりもっともっとすごいことができますよ。

F:MX-30のEVはなぜ4駆にしなかったのですか、ハイブリッドのほうは4駆でしたよね。

なぜEVは4駆にしなかったのか

:ツインモーターにしなくちゃいけなくなりますよね。そうするとものすごくコストがかかる。

F:1モーターのままで、軸で引っ張ることはできませんか?

:電気ベースのカップリング4駆、シャフト4駆ということですか。それは世の中にないですね。存在しません。技術的に不可能ということではありませんが……。

F:問題はコストだけですか?

:問題はコストとバッテリーの置き場所です。プロペラシャフトというのは実はすごくデカいんですよ。フェルさんの言う「軸を通す」というやり方だと、バッテリーシェルを置く場所がなくなってしまう。将来的にバッテリーの効率がよくなり体積が小さくなって、もっと車体の大きなEVが主流になってきたら、当然4駆が必要になってくると思います。だからもちろん4駆の研究はしています。今日体感してもらったことより、さらにすごいことができるよう準備はしています。

F:ここからさらに良くなるんですね。そんなことを聞いてしまうと、いつまでたってもマツダのクルマが買えないじゃないですか(笑)。

:そこはだから、マツダスカイプランをご利用いただいて。3年ごとに新車へのお乗り換えをご検討いただけるクレジットプランです。常に最新のマツダ車に乗っていただけるのが、僕らとしてもやっぱり嬉しいんで。

F:一種のサブスクですね。一定のお金を払えば、ずっと最新のクルマに乗っていられるという。

マツダ広報:残価設定型です。しかも3年後の残価率が55%なんです、このEVは。

:残価率、すごく高いですよ。EVで3年後に55%ですからね。これはとんでもなく高い数値です。とんでもないですホント。

F:梅津さんセールスもやるんだ(笑)。マツダのエンジニアはホント枠を超えた仕事をしますよね。

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