ベクタリングするのは、トルクではなくて加速度です

:フェルさんの言うことも分かりますよ。そういうドッカン感覚を求めるお客様が一定数いることも分かる。でも僕ら、結局量産EVとしては後発になったじゃないですか。テスラとかがある中で、このクルマでそれをやったって仕方がない。このクルマは4輪車としてのスムーズな動き、今感じていただいているGVCのバネ、ロールとピッチがちゃんと連携する動きを最も大切にしているんです。そこにアクセルをポンと踏んだときに、すごいピックアップを入れたりしたら、すべてが台無しになってしまう。さっきからフェルさんがすげーすげーと叫びっぱなしのこの滑らかな動き。これはこのアクセルの滑らかな応答とちゃんとつながっているんです。

F:そこにドッカン感覚を入れたりしたら……。

:もう台無しです。全てがバラバラになってしまう。このGのつながりが……。

 そもそもGって何かっていう話なんですよ。みなさん前後Gだとか横Gだとか勝手なことを言っていますけど、それは全部つながっているんですよ。切り離して考えるべきものじゃないんですよ。

F:なるほどねぇ……。するとマツダのG-ベクタリングというのは……。

:全てつながっているんですよ。回すんですよ。G-ベクタリングの意味は、読んで字の如く“Gをベクタリングする”という事です。Gの方向を制御するんです。だから「トルクをベクタリングする」なんて言うのはそもそもがおかしな言葉なんですよ。

F:トルクベクタリング。トルクをベクタリングする。ベクタリングはベクトルのingですから。トルクの配分と解釈すれば、それはそれで理解できませんか。

:いや、その言葉はやっぱり間違っていると思う。これは欧州のメーカーが勝手に言っていることなんだけれど……。

F:イーネ! イーネ!(横山剣調)。

:トルクベクタリングというのは、もともとDYCという技術なんですよ。ダイレクト・ヨーモーメント・コントロールという技術。左右のトルク差をつけてヨーをつくるという、簡単に言うと戦車の動きですよね。それを造ったのは日本人です。ホンダの芝端(康二)さんという方と、それから三菱(自動車)の澤瀬(薫)さんという方。この2人が造った技術です。

ランサーエボリューションIVに初搭載されたアクティブ・ヨー・コントロール(写真:三菱自動車)
ランサーエボリューションIVに初搭載されたアクティブ・ヨー・コントロール(写真:三菱自動車)

F:へぇ。三菱とホンダですか。三菱というと、最初はランエボあたりに。

:そう、三菱さんで言うとランエボⅣ(アクティブ・ヨー・コントロール=AYC)からで、エボⅩは素晴らしい仕上がりでした。ホンダさんの場合はATTS(左右駆動力配分システム)という技術が最後のプレリュードに載っていて、それがレジェンドのSH-AWDに進化しました。それは芝端さんという、もう退職されたけど、ホンダさんのすごい技術者です。

 と、話が飛びましたが、もともとはDYCという技術だったんですよ。それを欧州メーカーが勝手にトルクベクタリングとか言い出したんです。でも正確に言うとトルクはベクタリングされてないんです。トルクはディストリビューションされているだけなんですよ、左右に分配されているだけ。だからトルクベクタリングっていうのはおかしい言い方です。

最終型プレリュードに搭載されたATTSユニット(写真:ホンダ)
最終型プレリュードに搭載されたATTSユニット(写真:ホンダ)

 いやぁ、いいですね、梅津さん。もう怖いものなし。マツダに新キャラ登場です。

 このお話は次週に続きます……ていうか、インタビューの文字オコシを見るとまだ8分の1も書いていないんですよね。この先どうなるのでしょう。このペースで行くと8月いっぱいまでかかってしまいます。ま、粛々と進めていきますね。それではみなさまごきげんよう。

次ページ ジムで体験する“荷重移動”