プラットフォームはフルインナーフレーム構造と構造用接着剤の使用拡大によるSGPの進化型。ねじり剛性は旧型と比べ実に44%も向上した。そこに最新の軽量化エンジンが搭載され、2ピニオン式の電動パワーステアリングが付き、STIスポーツには独ZF社製の電子制御可変ダンパーまで装備されている。今までのSUBARUとはひと味もふた味も違う乗り心地は、うっとりするほどの出来栄えだ。それでいてお値段たったの310万2000円から。激安と言っていいだろう。この内容なら、もっと値上げしてもいいのではないか。

 レヴォーグの開発責任者、五島さんインタビュー最終回は、この辺りからお話を伺おう。

SUBARU商品企画本部 プロジェクトゼネラルマネージャー 五島 賢さん
SUBARU商品企画本部 プロジェクトゼネラルマネージャー 五島 賢さん

フェルディナント・ヤマグチ(以下、F):モードの設定により、高級車にもなりスポーツカーにもなる。変化自在のこのクルマ。旧型と比べると明らかに質感がアップしています。アイサイトXも高速道路においては“ほぼ自動運転”と言っていいレベル。この内容なら、価格をもっと高くしても売れるのではありませんか?

SUBARU商品企画本部 プロジェクトゼネラルマネージャー 五島 賢さん(以下、五):うーん。確かにもうちょっと上乗せしてもよかったんじゃないかな……という気もするのですが……でもやっぱり高いお買い物ではありますからね。

 今回、私がレヴォーグをやらせてもらって考えたのは、先程申し上げた2格上だの、超革新だの、フラッグシップだのということがまずありますよね。

F:はい。インプレッサがモデルチェンジしてきても、追い付けないほどに“格”を上げてしまおうというお話でした。非常に印象的です。

:それを考えると、もうちょっと全体的に上級シフトしてもよかったのかもしれないな、とも思うんです。クルマのポジションとして。

F:それは価格も含めてですか?

:そうです。価格も含めて。でも実際にそれをすると、お客様がついてきてくださらないのではないかと思いまして。

F:どうでしょう。それは実際にやってみないと何とも……とは言え、値上げしました。売れませんでした。やっぱり値下げしました……というのはこの産業じゃ許されませんよね。牛丼やハンバーガーじゃないんだから。

:そこなんですよ。実はあるアメリカの知人に言われたことがあるんです。クルマを企画するのを家に例えると、引っ越ししちゃダメだよと。家を建て替えるときは引っ越ししちゃ絶対にダメ。違う場所に移動するのではなく、同じ場所で徐々に間口を少しずつ広げるようにしていかないと、お客様が逃げちゃうからと。だからスターティング(最廉価版)のところは変えずに、少しずつ高くするという感じでやってきたのです。

F:引っ越しレベルの大幅値上げはうまくありませんが、例えばレヴォーグを一律で3万円高く売ったとして、販売台数に影響が出るでしょうか? そんな客は一人もいないと思うのですが。販売実績を見ると……えーと。2021年1月が4962台。2月が3677台。3月は4892台ですか。年初の3カ月で1万3531台も売れているわけで。これが3万円高ければ、ざっくり4億円の増収です。4億が丸々利益になるのですよ。ひぇー儲かるなぁ。

テーマは「ワゴン価値」の復権

:フェルさんの言う通り、3万円高いからといって、売り上げにそう大きな影響は出ないとは思います。でもクルマってそう簡単なものじゃなくて、値上げするならどこかを良くしなければいけません。すると、ここをやるとあそこもやりたくなって、ここもやりたくなって、となる。これはクルマ屋の習性です(笑)。そうしたらあっという間に30万円、40万円も上がるようになってしまう。それにレヴォーグの値上げはレヴォーグだけの問題じゃありません。SUBARUのほかのクルマにもすべて影響します。レヴォーグだけが勝手に値上げをするわけにはいかないのですよ。

F:なるほど。分かります。

:私がこのクルマを造るに当たって一番大事にしたのは、“先進安全”と“スポーティー”と“ワゴン価値”という3本柱です。ここに集中的に資源を投下して、キャラを立たせようと考えました。

F:先進安全性とスポーティーは分かりますが、「ワゴン価値」とは何ですか?

:読んで字の如くです。ワゴンとしての価値を、もう一度訴求しよう、再訴求しようということです。

F:具体的にどういうことでしょう?

:今はSUVが全盛ですけれども、車両のバランスを物理的に考えたら車高が低く重心が低いほうがいいに決まっている。しかも荷室の長さがちゃんとあって使い勝手もいい。SUVがいい、SUVじゃなきゃダメという方が多くいらっしゃる中で、あえて先代が言わなかった「ワゴン」という言葉をもう1回出し、ワゴンをアピールしようと思いまして。

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